あまり知られていないが9月23日は「万年筆の日」だ。211年前の9月23日、英国で万年筆の原型となったペンが発明されたことから制定された。今やパソコンやスマホの普及により、手書きで文章を書く機会は減っている。まして、わざわざ万年筆を使う人など、極めて限られている。だが、万年筆には使う楽しみとともに、意外な効用もあるのだ。(国際政治評論家・翻訳家 白川 司)
紙に字を書くことは
脳を活性化する
10年ほど前に放映されたNHK『クローズアップ現代』で興味深いデータが提示されていた。スマホがまだ普及していない時代、若者と携帯メールの関係について分析していた。
番組では若者の携帯メールの内容が公開されるのだが、「いる?」とか「いいよ!」など、ごく短い言葉のやりとりが延々と続いていくのである。当時はLINEのようなメッセージアプリがさほど使われていなかったので、LINEと同じことを携帯メールでやっていたのだろう。
番組では驚くべきデータが提示された。単純化すると、「メールの時間と成績は反比例する」ということだ。極端に言うと、メールを長くやる若者ほど成績が悪いということになる。
そして、その説明が専門家によって加えられていく。脳の活性化の程度で「どれくらい脳を使っているか」を見ると(モニターで脳の部位が赤くなることで示される)、メールを打っているときは赤くならずほとんど活性化しないのである。
次に紙に字を書くと、いきなり赤の部分が広がっていった。書くことで、脳の広い部位に強い活性化が起こった。