企業炎上はジェンダーからダイバーシティへ

――企業のジェンダー意識にはどのような変化が見られますか。

 まず「ジェンダー」という言葉を知っている人が以前より明らかに増えました。企業研修で「ジェンダーという言葉を知っていますか」と聞いたときに、意味を正しく理解しているかまでは分かりませんが、「言葉自体を知らない」と返答する人は少なくなってきました。

――炎上防止への意識はいかがでしょうか。

 炎上するとビジネスにとってマイナスになるので、炎上したくないと真剣に考えています。かつ、他企業が炎上したときに、どのような声があるか入念にチェックしている人もいます。SNSなどで他社が炎上しているのを見て、自社の炎上を未然に防ぐために研修を依頼しているようです。

――最近の企業炎上の傾向はありますか?

 ジェンダーだけでなく、ダイバーシティという枠組みでの炎上が大規模化することが多いと感じています。その傾向を特に感じているのが、大坂なおみ選手の一連のBLM運動関連です。彼女のスポンサー企業が基本的に逃げ腰であるとメディアで指摘されたり、ツイッター上で日清食品とナイキの広告の比較がされたりしました。ナイキについては、1990年代に途上国での児童労働の問題を指摘された過去があり、最初から意識が高いというよりは失敗から学び、現在のような対応ができているのかなと思います。今後、日本企業も、批判されたときにどのように変わっていくのかが大事なポイントです。
 
――最近、メッセージ性のある広告を作ろうとして炎上してしまうケースがありますが、企業としてはどういったことに気をつければいいのでしょうか。

 根底にある社会問題への理解が浅いゆえに、炎上する傾向があるように感じます。問題の本質を理解できていないと、メッセージが核心を突いていなかったり、本来指摘すべき視点から逃げたりしています。社会問題を扱うことは広告に求められている役割ですし、取り扱えば注目もされますが、そんなに簡単なことではありません。その問題に直面している当事者にヒアリングをしたり、専門家に話を聴いたり、制作段階での深い調査が必要です。

共働きならジョブ型雇用…しかし良いことだけではない

――新刊『「男女格差後進国」の衝撃 無意識のジェンダー・バイアスを克服する』では、職務内容や勤務地が決められていない日本型雇用である「メンバーシップ型雇用」、職務内容や勤務地があらかじめ決められている欧米型雇用の「ジョブ型雇用」の視点から、なぜ日本企業に女性リーダーが少ないか解説されています。やはり日本もジョブ型雇用にシフトしていくべきなのでしょうか。

 メンバーシップ型にもジョブ型にも、メリットとデメリットがあります。メンバーシップ型のメリットは雇用が安定していること、デメリットは仕事内容や勤務地の希望が合わなくても、会社命令に従わなければならないことです。ジョブ型のメリットは、自分の得意分野を生かせること、デメリットは会社員といえども必ずしも雇用が安定しておらず、部署ごと人員整理の対象になることがありますし、常にスキルアップをし、市場価値を高める必要があることです。