たとえば、「ある草」に触れて「激しくかぶれた」としよう。この時、「ある草」を知覚した神経と「激しくかぶれた」ことを知覚した神経が、同時に興奮している。このように、2つの知覚が何度も同時に起きることで、神経間、情報間のつながりが強くなる。何かを知覚した神経、情報の間で連関が起きること、そして2つ以上の知覚できる情報につながり合いが生まれること。これこそが生物における学習、理解の本質といえる。

 人間は、価値を理解していることのみ知覚でき、知覚は経験から生まれる。それが知的体験、人的体験であり、思索の深さとなる。思考の核心とは、「知覚されたインプット」にあるのである。

【必読ポイント!】
◆思考のイノベーション 濱口秀司(はまぐちひでし)
◇リソースと自由度

 2人目は、イノベーション・シンキング(変革的思考法)の世界的第一人者、濱口秀司氏である。濱口氏は世界初のUSBメモリをはじめとする、多くの画期的なコンセプトを考案してきた人物だ。

 会社では通常、コンセプト(Concept)→ストラテジー(Strategy)→意思決定(Decision Making)→実行(Execution)というプロセスで物事が進む。これは商品開発や研究にも当てはまる。

 この横軸に自由度という縦軸を重ねてみると、コンセプトを立てる時点では自由度は一番高く、あらゆることを360度で考えられる。しかし、その後プロセスを経るにつれ、自由度は落ちていく。ビジネスとは、無限の自由度から自由度を落としていく作業にほかならない。

 ここにはR/A(=リソースアロケーション/人材、資金、時間といったリソースの割り当て)という、もうひとつの縦軸が潜んでおり、自由度と反比例した曲線を描く。つまり、R/Aは戦略的自由度とトレードオフ構造になっている。自由度の高い状況では、人やお金が割かれず、実行段階に近づくほど、みんな頑張るということだ。

 このようなことが起きる理由は、ツールの有無にある。実行段階では、会計処理なりカスタマーサポートの仕組み作りなり、具体的なやり方がある。これに対し、コンセプトを構築する段階ではツールがない。「すごいホワイトボードペンを作れ」というミッションに、仮に1週間考える時間を与えても何も生まれないだろう。なぜなら、考えるためのツールがないからだ。

◇バイアスを破壊する

 コンセプト・ビルディングは「ゼロ→イチ」と言われることが多い。だが、濱口氏は「ゼロからスタートしなくていい」という。もちろん、アイデアが突然降ってくる天才肌もいるだろう。しかし、そうでなければ、フォーカスする場所を見つけてイチからスタートすればいい。そして、このイチとは「バイアス」を意味する。