スガノミクス#2
写真:西村尚己/アフロ

菅義偉氏が地方銀行の数について「多過ぎる」と言及した直後、再編期待からか一部の銀行株が急上昇した。マーケットが将来的な経営統合を見込んでいる地銀はどこなのか。特集『スガノミクスの鉄則』の#2では、菅氏の発言前後の株価の動きから、上場銀行87社の統合期待度をランキングした。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

上場銀行87社をランキング!
市場が再編を期待する地銀はここだ

「おそらく、『耳の痛い話まではっきり言うのが政治家なんだ』というのが、菅首相の師匠の教えなのだろう」

 自民党総裁選挙のさなか、地方銀行に対して「再編も一つの選択肢になる」とあえて言及した菅義偉首相の姿勢を見て、銀行の監督官庁である金融庁幹部は、菅氏が政治の師としてあがめているとされる人物を想起していた。

 梶山静六――。1996年からの第1次橋本龍太郎内閣では官房長官を務め、その後も自民党幹事長などの要職を歴任した政界の大物だ。武闘派と呼ばれ、過激な発言を繰り返した梶山氏は、金融界においてもその印象を色濃く残している。

 98年に第2次橋本内閣が退陣した後、梶山氏は自民党総裁選に打って出た。当時、北海道拓殖銀行や山一證券が続いて経営破綻しており、金融システムの危機が社会問題と化していた中で、梶山氏は銀行再生における「ハードランディング」路線を主張。銀行再生に向けて、積極的に不良債権を処理すべきであり、都市銀行には大再編が必要だと訴えた。

 総裁選には敗れたものの、梶山氏の読み通り、当時10行あった都銀は今や5行と半減している。

 こうした師を持つ菅氏が同じように「再編」と言い切ったのは、都銀が歩んできた歴史と異なり、地銀に関しては再編が遅々として進んでいないからだろう。

 都銀が10行あった90年代後半から現在までを見ると、相対的に規模が小さい第二地銀は64行から38行に減っているが、第一地銀はこの10月の長崎県での合併により一つ減ったものの、それまではずっと64行体制を維持してきた。

「物事が何十年も進まないのには理由がある」(銀行アナリスト)。地銀の数が減っていない一つの理由として、隣県の地銀同士が合併ではなく経営統合を選択し、持ち株会社を立ち上げるのがかつての“はやり”だったという事情がある。

 だが、これは不可侵条約のようなものを結ぶかたちでの再編が多かった。故に、売上粗利益を増やしたという明白な統合シナジーを出せた地銀は少なく、また営業地域の重複が少ないため店舗数削減というコスト改革も実現できていない。再編の実利を得ているのか不透明な地銀が多いと、金融当局も疑問視していた。

 その反動からか、前述した長崎県のほか、新潟県および三重県で起こったように、近年は同じ都道府県内の地銀が合併するかたちの再編が主流となった。

 10月1日に、長崎県では十八親和銀行が誕生。新潟県と三重県でも競合地銀がそれぞれ来年の合併を目指しており、こうした再編がどこまで統合シナジーを出せるかが、県内再編の試金石になる。

 そのための舞台装置も整っている。今年5月、独占禁止法の適用除外という特例措置を認める法案が可決・成立し、県内シェアが高過ぎて経営統合できないという問題は消え去った。

 こうした環境の変化と、それに追随する菅氏の発言から、発言直後にマーケットはビビッドな反応を示した。詳しくは後述するが、株価が60%も上昇するなど、一部の地銀を中心に銀行株の価格が急上昇している。地銀株は、「流動性が低い中小型株であるところが多い」(前出の銀行アナリスト)。そうした地銀に対して、再編期待から市場マネーが一気に流れ込んだとみていいだろう。

 では数多く残る地銀の中で、投資家をはじめとする市場関係者が、スガノミクスで再編に動くと見込んでいるところはどこなのか。

 それを調べるためにダイヤモンド編集部では、銀行持ち株会社を含む上場銀行87社を対象に、株価の動きでランキングを作成した。株価の上昇率が高ければ高いほど、地銀再編のキープレーヤーになると市場が期待しているといえそうだ。

 ランキングは、菅氏が地銀再編に言及した前後である9月2日と25日の終値を比較して、同期間の株価騰落率に基づいて順位付けした。参考値として、9月25日時点でのPBR(株価純資産倍率)をランキングに付している。

 早速次のページから、ランキングの結果を見ていこう。