コンビニエンスストア各社に対し、目下事業改善を迫っている公正取引委員会。9月16日、そのかじ取りを担う委員長に、菅義偉首相の元側近が送り込まれた。特集『スガノミクスの鉄則』の#1では、いや応なしに強まる圧力の中で、コンビニ各社が恐れる最悪シナリオを探った。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)
公取委が突き付けた
コンビニ各社への「最後通告」
「コンビニエンスストアを巡る取引環境が、改善に向かうことを強く期待しています」
9月1日、公正取引委員会の事務方トップの菅久修一事務総長は、セブン-イレブン・ジャパンや、ファミリーマート、ローソンなど居並ぶ大手コンビニの社長たちにそう呼び掛けた。
事実上の行政指導として、各社に改善を強く求めた項目は、(1)仕入れ数量の強制(2)見切り(値引き)販売の制限(3)24時間営業の強制(4)ドミナント(地域集中出店)――の大きく四つだ。
公取委が全国のコンビニを対象に、独占禁止法の観点から実態調査に乗り出したのは、昨年10月のこと。公表まで1年近くの期間をかけて実施した同調査で、何より目を引いたのはその規模だった。
調査対象とした全国の5万7524店のうち、オンラインアンケートで集められた回答数は1万2093店。2011年に実施された前回調査の回答数1389店の9倍近くに上っている。
「一部の加盟店の事例にすぎない」。コンビニ各社のそうした反論を封じる大規模な調査によってあぶり出されたのは、先の四つの問題点だけではない。
公取委が浮き彫りにしたのは、独禁法上の問題点というよりむしろ、コンビニ事業の柱となるフランチャイズ(FC)モデルとその成長戦略が、今の時代に適合しなくなり、「制度疲労」を通り越して破綻しかかっているという実態だった。
独禁当局に、個別の違反事案について指摘を受けるのではなく、事業としての持続可能性を問われるという異例の事態を、コンビニ各社は当初受け止め切れないような様子だった。
公取委から、11月末までに指摘した項目について加盟店との取引を改めて点検し、報告するよう要請されても、どう面従腹背してやり過ごすかに頭を巡らすような大手本部の姿もあった。
しかし、公取委からの圧力を無傷で擦り抜けられると考えている本部は、今となってはほぼ皆無かもしれない。