「『よい子』を振る舞う児童は、わからないことを素直に『わからない』と言えないという特徴があります。なぜなら、もしそんなことを口にしたら、前述したようなリーダー格の児童から『なんだお前、そんなこともわからないのか』とばかにされ、学級内でのヒエラルキーが落ちてしまうからです。また、授業中に先生が児童に『これについて君はどう思う?』と尋ねても、ほとんど誰も返事をしてくれないケースもあります。その理由は、万が一変な回答を言ってしまってばかにされたくないということと、仮に正解を言ってしまうと今度は『調子に乗るな』とやっかまれてしまう。児童たちの多くは、自分の発言が周りにどう受け止められるか常に思慮をめぐらしているようです」

 こうした児童が増えている原因として、一つには「学校スタンダード」が昔より強化されていることがあるという。学校スタンダードとは、児童に対して授業を受ける際の望ましい姿勢や、持ち物の規定などを詳細に決めたルールのことだ。

「学校スタンダードは、たとえば体育館や校庭では無言で列に並ぶ、掃除の時間には教室の窓を開ける、廊下の踊り場で遊ばないなど事細かく決められています。ある小学校では、職員室から校長室までの間の廊下は『サイレント通り』と名付けられ、休み時間であっても私語厳禁という謎ルールもあります。本来、休み時間中におしゃべりするのは別に普通のことですが、もししゃべっている児童がいたら先生に『サイレント通りでは静かにしなさい!』と怒られ、その子たちの担任の先生も校長や副校長に『児童をしっかり管理しなさい』と指導されます。学校という組織は保護者やマスコミなどから常に監視されているため、保守的な考え方に染まりやすく、担任は児童がどれだけ学校スタンダードを順守しているかで評価されてしまうのです」

 そのため、ほとんどの教員は学校スタンダードに従わざるを得ず、その影響は児童にも暗い影を落としている。