入山 たしかに極めて「善意型」と言えますね。聞いたことのないしくみです。

普通はデータを渡したら、ベンダーが予測し、在庫リスクなどの責任も取らせる。関係性が長いから、たとえ全量買取であっても、多めの納品などしない。強い信頼関係がありますね。

「聞いたことがない」と入山教授、驚愕!ワークマンだけがやっている「善意型」サプライチェーン……ワークマンの仕掛け人と早大入山教授の白熱対談3入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所でおもに自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー。2013年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。2019年から現職。Strategic Management Journal, Journal of International Business Studiesなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。著書にベストセラーとなっている『世界標準の経営理論』などがある。

土屋 加盟店との関係も似たところがあります。本部と加盟店は利益を6対4で分けるので、ロスも6対4で分けるべきです。店舗の値下げロスは6割を本部が持ちます。

入山 ネットワーク組織を構築されている。ネットワーク組織は、いかに信頼のしくみをつくるかです。要するにソーシャルキャピタルということになりますね。

土屋 お客様との信頼関係は「値札を見ないで買う」ところに表れていると思います。

おそらく値札を見るようになったときに信頼関係が崩れ、お客様の離反が始まるでしょう。

以前、消費税が8%になったとき、店長の仕事量が増えるので、値札をすぐにつけ替えろという指示はしませんでした。値札のつけ替えに2、3ヵ月かかってもいいと。

その代わりに「消費税が8%になりました」という看板を店頭に立てました。それでもお客様は値札を見ていませんでした。「よかった」と喜んだのですが、後でゾッとしました。

値札を見ないということは、おかしな製品を出し、精算後に「高い」と思われたら、お客様はこなくなるでしょう。