入山 お話を伺っていて、オーセンティック・リーダーシップという考え方が頭に浮かびました。オーセンティック・リーダーシップは、倫理観を重視し、自分はどういう人間か、自分が大事にする価値観は何かなど、自分の考えに根ざしたリーダーシップを指します。

土屋 はい。

入山 オーセンティック・リーダーシップが注目されている背景には、時代の変化とともに、働き方やリーダーシップへの考えが変わってきたことがあります。これまでは、強い力、パワー、権力といったハードなものを備えた人がリーダーだとされてきましたが、現在では知識や価値観といった、よりソフトなものに基づくリーダーが求められるようになりました。

土屋さんはオーセンティック・リーダーシップを発揮されていると思います。価値観を表明され、殻をつくっていないので周囲から信用される。たぶん会社も同じで、ワークマン自体がオーセンティック・カンパニーになっているのではないでしょうか。

ベンダーや加盟店との関係も障壁が少なく、さらけ出した情報を共有されています。そのために腹を割った信頼関係がつくられているのでしょう。続きは次回、聞かせてください。

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土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。