60歳以降は「収入ダウンの崖」が2回ある。定年後、多くの人は65歳まで再雇用で働くことになるが、給与は50代の3分の1程度にダウンすると思っていた方がいい。これが1回目の「崖」。崖から落ちるように給与振込額が減るからだ。

 そして65歳から年金だけの生活になると、2回目の「崖」があり、収入はもう1段階ダウンする。年金収入だけで暮らせるケースはほとんどなく、家計収支は赤字になるため、退職金は年金生活の赤字を補完する老後資金として取っておくべきで、ローンの一括返済に大半を使ってはいけないのだ。ローンを組む段階では、このことを認識していない人が大多数のため、「退職金で一括返済すれば何とかなる」と考えてしまうのである。

 一方、退職金をあてにせずに40~50代で少しずつ繰り上げ返済をするつもりだった人も、子どもの大学進学で想像以上に教育費がかかり、計画通りに繰り上げ返済ができないことが多い。

 現在の大学進学費用は、親世代が大学生だった30年前と比べて驚くほど高騰している。子どものために貯めたお金では足りず、親が教育ローンを組んだり、子どもが奨学金を借りたりしているのが実態だ。今の大学生の2人に1人は、奨学金を借りているという調査結果もある。

 これからマイホームを購入するなら、老後に大きな負担を残さない返済期間は「65歳−ローン返済開始年齢」だと覚えておいてほしい。ローンを組むのが35歳なら返済期間は長くても30年。40歳なら25年ということだ。

 65歳の完済だと返済期間が短く、毎月の返済額が多過ぎる結果になったら、それは借入額が身の丈以上というシグナル。購入物件の予算を見直したり、頭金を増やしたりと、冷静に再考する必要がある。

 なぜ60歳までではなく65歳なのかというと、当初から「60歳までのローン」を組むと返済期間が短くなり過ぎて、毎月返済額が多額になってしまう。ローン審査に通らない可能性があるし、何より多額の返済額を返し続けることは大きなリスクとなり、老後を迎える前に家計が破綻する可能性があるので、「65歳」としている。

 65歳までのローンであれば、60歳時のローン残高は500万~600万円程度。この程度の金額なら、老後に負担をかけない見直し方法があるので、新規ローンの最長返済期間は「65歳になるまでの年数」を死守してほしい。