「賢いトップ」が組織をダメにしてしまうのはなぜか賢い人が組織のトップに立つ上での課題とは? Photo:PIXTA

 トップは、どの程度の知性を持った人物であるべきか。社会の一般顧客を相手にしている以上、あまり「大衆」と感覚に乖離があると、社会の動向を見誤るおそれがあるから、あまり聡明すぎない人のほうがよいのではないか。いやいや、トップは超越的な能力を持っていなければ、とても人と組織をまとめることなどできない……。いろんな意見があるが、実際のところはどうなのだろうか。

企業で見られる
「賢い人」の3タイプ

 まず、「賢い人」をいくつかのタイプに分けて考えてみよう。「賢さ」のあり方は実際には多様性があるものだが、ここでは企業組織に見られる代表的な賢いトップのタイプを3つに限定して考えることにする。

1.「能吏タイプ」:きわめて優秀な官僚のようなタイプ
2.「革新タイプ」:イノベーター、型破りなタイプ
3.「紐帯タイプ」:人望があり、優秀な人をうまく使って組織の結束を固めるタイプ

1. 能吏タイプ

 こんがらがったものを魔法のようにさっと整理できる。複雑な状況を一定の基準をもとに瞬時に整理し、あり得る選択肢を複数提示し、適切な評価基準を用いて得られる成果の大きそうなもの、期待値の高いものを選択し、その遂行に向けての体制を作る能力が高い。

 一般的な「賢い人」の代名詞のようなタイプといえる。分析力と統合力の両方を兼ね備えた秀才である。「一流大学」を卒業し、「一流企業」に就職し、出世コースに乗ったという程度では、到底このレベルに達することはできない。修羅場を経験し、場数を踏み、同時に知的な研鑽を重ねてはじめて得られる知性である。最初はトップのブレーンとして活躍し、そこでの活躍が認められてトップに引き立てられることがある。