9.11が変えた
米国社会の現実

 これを変えたのは、9.11のテロ事件だった。この時、ニューヨークではイスラム教徒がほぼ一掃された。中近東系であるだけで逮捕されるような事態まで起こっていた。冷静に振り返れば、米国社会の分断は、この時から起こっていたのである。

 やがてテロとの戦争は長期化し、ブッシュ政権ではイラクのフセイン大統領を捕まえて、オバマ政権ではオサマ・ビン・ラディン容疑者を殺害した。それでもテロへの恐怖は今も続き、現在も飛行機に乗る際の手荷物検査は厳しくなるばかりだ。

 現在、サンダース上院議員の掲げる「民主社会主義」に賛同する若者たちは、その先陣にいるオカシオ・コルテス下院議員を始め、この2000年代に幼少期を過ごし、米国経済が好調だった20年間を経験していない世代でもある。

 同時に、9.11テロ後の米国経済では、誰もが無条件に利益を得られるような幸福感はなく、イスラム教徒や黒人などを差別する流れが加速していった。現在、全米の人口の13%を占める黒人の半分はイスラム教徒だともいわれているが、これは白人が勝手に作りあげたレッテルでしかない。つまり事実無根なのだ。

 9.11以降、少しずつ進んだ分断の中で、“黒人”初のバラク・オバマ大統領が誕生した。期待を受けたオバマ大統領だが、分断の解決に当たるよりも、むしろイスラム教徒寄りの外交政策を進め、9.11後に減り始めていたイスラム教徒の米国への移住も再び増やしていった。それに対する不満が募り、人種差別問題が再び米国で過熱していった側面もある。