トレーディングから事業投資・経営へとシフトし、現在の商社がその先のビジネスとして見据えているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)だ。大きく2つの柱がある。

「一つは既存ビジネスをDX化することによる効率化やコスト削減、高付加価値化。もう一つはDXによって全く新しい事業をつくることを見据えている」(佐野氏)

商社に求められる人材の条件
ポテンシャルから「学業」重視へ

 では、こうした時代の変化の中で、商社マンに求められる人材像はどう変わってきたのか。佐野氏は、かつては人間性やコミュニケーション能力のある「グローバルリーダー」が求められていたが、今はそれに革新力をプラスした「イノベーティブグローバルリーダー」が求められていると語る。

 イノベーティブグローバルリーダーに必要な要素を分解して見てみよう。

リーダー:主体的に周りを巻き込むことができる。役職によらず、新入社員でもリーダーに
グローバル:海外のみならず、いつでもどこでも、年齢や属性を問わず誰とでもコミュニケーションを取れる
イノベーティブ:仮説検証力、論理的思考があるなど、課題発見・解決ができて、今までにないアイデアを生み出せる

「かつては時代の変化が緩やかで、社会は複雑ではなく、課題も明らかになっているものが多かった。しかし現在は、時代の変化のスピードが速く、社会も複雑になり、課題を明らかにすることすら難しくなっている。また、その解決方法は過去のノウハウが通用しなかったり、手法が無限にあったりと、求められるレベルが上がっている」(佐野氏)

 実際、採用試験においても、こうした人材を求める流れが生まれており、三菱商事や三井物産では、すぐに答えの出せない質問を出題することで、一定の仮説を立てながら、解答を論理的に導き出す「ケース面接」を導入。住友商事では、通常の選考プロセスとは別に、「デザイン選考」というアイデア力を問う採用試験を行うなど、考え抜く力、デザイン思考がより求められている。