リモートワーク従事者の運動不足が懸念されている。
大阪大学の研究グループは、座位時間の健康リスクに着目し、就業形態別に座位時間と慢性腎臓病(CKD)との関連を調べた。
調査対象は、2006~13年度に定期健康診断を受診した同大職員1万0212人で、健診時に「デスクワーク(DW)」「デスクワーク以外(非DW)」で就業形態を区分している。また、CKDとの関連は蛋白尿陽性(+1)の出現と定義した。
追跡期間(中央値4.8年)中、男性597人(男性職員の12.0%)、女性697人(女性職員の13.3%)に蛋白尿が出現。テレビの視聴時間や家での座位時間の影響を調整して解析した結果、DW群では非DW群より蛋白尿の出現リスクが35%有意に高かった。
また、テレビ視聴時間が長いほど蛋白尿出現リスクが高くなることも判明している。たとえば、1日のテレビ視聴時間が30~60分の人と3時間超の人を比べた場合、長時間視聴者の蛋白尿出現リスクは1.77倍に上昇する。
ただし、これは「男性」に限った話。女性は就業形態と蛋白尿との関連は認められなかった。
研究者は「男性はデスクワークが蛋白尿のリスクになる」とし、座位時間の短縮を勧めているが、在宅勤務で座位時間を減らすにはどうしたらいいだろう。――ヒントは「家事」である。
北海道寿都町の住民2638人が対象の調査からは、女性は職業の有無にかかわらず男性よりも座位時間が13.3%短く、結果として総身体活動量が有意に多いことが判明している。また、この差は軽強度の活動量の違いに由来していることもわかった。
つまり女性は育児や介護、食事の支度に洗濯、掃除と文字通り「座る間もなく」一日中、身体を動かしているわけだ。ちなみに「風呂/床掃除」や「介護」は速歩~水中運動並みの活動量がある。
健康効果が期待できる運動は中強度以上で20分以上が定番だったが、最近は軽強度の身体活動を積み重ねても効果があることがわかっている。エクササイズのつもりで家事分担を見直してみよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)