はんこムダの象徴と思われ始めたハンコ文化だが、本当に議論すべきことは他にある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

ハンコ撲滅の「正義のお仕置き」で
大炎上する企業が続出か?

 先日、ある有名な企業が炎上した。

 きっかけは、この会社を辞めた人間によるSNSへの投稿だった。この企業、対外的には電子契約や電子署名などを積極的に採用していくと触れ回っていたが、実際の社内では、デジタルに弱い経営陣や取引先に確認をしてもらうための決済書類で、ハンコ文化がバリバリに残っていた。その結果、デジタル対応とアナログ対応の両方を相手によって使い分けなくてはならず、社員の負担が増えているという。

 辞めた社員は、こうした内部事情を暴露してしまったのだ。それを受けてSNS上には「ハンコ警察」が登場、この企業を厳しく断罪した。

《こんな時代にムダなハンコを社員に強いるなんてブラックだ!》

《若い社員がジジイ連中に合わせるのではなく、ジジイ側がもっと勉強して時代に合わせろ!》

 という感じで、世代間論争まで勃発。さらに、これをマスコミやワイドショーが取り上げたことで、株価にまで影響が出始めた。ついにはこの企業は、社長の謝罪会見にまで追い込まれてしまったのである――。

「えっ!?そんなこと、あったっけ?」と戸惑う方も多いだろう。誤解をさせて申し訳ない。この炎上話は実はまったくのフィクションである。

 ただ、2020年10月時点で与太話であっても、近い将来こうした「ハンコ警察」による正義のお仕置きで、大炎上する企業が出てこないとは言い切れない。ご存じのように、菅政権が行政手続きのハンコを99%廃止するなど、「ムダなハンコ」を一掃する動きが加速する中で、ハンコは「ムダの象徴」として風当たりがかなり強くなっているからだ。

「いやいや、今、河野太郎さんたちが進めているのは、あくまでムダなハンコ業務であって、印鑑そのものを失くせなどと言っているわけじゃない。さすがにみんな、それくらいの違いはわかってるって」という冷めた声が聞こえてきそうだ。しかし、ここ最近起きているギスギスした人間トラブルを見ていただきたい。