最強の武器「経済学」#10
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ゲーム理論の応用分野であるオークション理論が、フェイスブックやグーグルなどのビジネスの中枢を支えていることはご存じだろうか。特集『最強の武器「経済学」』(全13回)の#10では、このような巨大テック企業などがどのようにオークションの仕組みを活用しているのか、そのメカニズムを詳解する。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

ビジネスの現場から公的な分野まで
実用性に優れるオークション理論

「テクノロジー企業の間では今、オークション理論が非常に重要な役割を果たしている」――。米アマゾン・ドット・コムや米イーベイなどに在籍して辣腕を発揮してきたゲーム理論の研究者、スティーブン・タデリス・米カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院教授(本特集#4『「日本企業に必須のゲーム理論」エッセンスを元アマゾンの経済学者が伝授』参照)はこのように強調する。

 その筆頭に挙げられるのが、世界を席巻する米フェイスブックや米グーグルなどの巨大テック企業だ。実は彼らのビジネスの根幹を成すオンライン広告において、ゲーム理論の応用分野であるオークション理論が大いに活用されていることをご存じだろうか。

 そして今年10月、米スタンフォード大学のポール・ミルグロム教授と、ロバート・ウィルソン名誉教授(本特集#9『2020年ノーベル経済学賞受賞者「ビジネスに使えるオークション理論」特別講座』参照)がノーベル経済学賞を受賞したのもまさに、2人の研究がこのオークション理論の発展へ貢献をしたとたたえられてのものだった。

 近年はマーケット(市場)のデザイン(設計)を変えることで、より洗練された仕組みの確立を目指す「マーケットデザイン」(「メカニズムデザイン」とも呼ばれる)の発達が著しい。この実現に向け、理論的な基盤となる2本柱がオークション理論と、マッチング(本特集#11『ゲーム理論「マッチング」の威力、米グーグルの社内人材配置でも大活躍』参照)なのだ。

 オークション理論はノーベル経済学賞の受賞理由となった、周波数帯の割り当てといった公的な分野から、オンライン広告をはじめとしたビジネスの現場に至るまで、実社会への応用性に優れているのが特徴だ。そんな世界的に注目度が高まっているオークション理論について、ここではその基本概念から、ビジネスで活用される際のメカニズムに至るまでを詳述していこう。

 そもそもオークション自体は「競売」を意味する一般的な言葉。ある売り手に対して、複数の買い手がそれぞれの入札行動をどのように取るか読み合いつつ、物品やサービスなどを巡って価格を競り合う仕組みのことだ。

 だが、実はこの方法には、用途などに応じてかなりのバリエーションがある。