社会的に有効活用が進むゲーム理論の分野が「マッチング」であり、実は米グーグルの人事戦略にも応用されている。特集『最強の武器「経済学」』(全13回)の#11では、人材の望ましいマッチングを図るにはどうすればよいのか、そのメカニズムを実例と共にひもといた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
あのグーグルも人材配置に活用
注目度高い「マッチング理論」
米グーグルが社内の人材配置にも応用したゲーム理論の一分野が「マッチング」だ。さまざまな市場のルールが望ましい形であるかを、公平性や効率性、インセンティブ(誘因)などの観点から捉え、必要に応じて設計を見直すのが基本的な考え方となる。
そんなマッチング理論は、ゲーム理論で得られた最新の知見を生かして現実の経済制度の修正・設計を行う学問分野「マーケットデザイン」において、オークション(本特集#10『フェイスブックの収益源、広告料金システムを支える「オークション理論」の中身』参照)と双璧を成す二大分野のうちの一つだ。
2012年には、米スタンフォード大学のアルヴィン・ロス教授(本特集#12『ノーベル経済学賞受賞者「ビジネスで使えるマッチング理論」特別講座』参照)がマッチング理論研究の功績を評価されてノーベル経済学賞を受賞するなど、学術界でも注目度は高い。
そして、マッチング理論は社内人事から保育園の待機児童問題、通学区域から公立学校を選ぶための学校選択、さらには「腎臓交換市場」に至るまで、社会的応用が幅広く進んでいる学問分野でもある。その具体的な手法としては、新たに適切なルールを形成するための「マッチングアルゴリズム(情報処理の手順)」を数学的に記述し、各市場に当てはめていく手法を取る。
このアルゴリズムのうち、最も代表的なものに「ゲール=シャプレー・アルゴリズム」(GSアルゴリズム)があり、このアルゴリズムの提唱者であるシャプレー氏は12年、前出のロス氏と共にノーベル経済学賞を受賞している。
GSアルゴリズムは安定的なマッチング結果を生み出すフレームワークであり、グーグルの人材配置にも活用されることになったわけだが、一体これはどんな仕組みなのか。以下、ケーススタディーも交えて解説していこう。