日本銀行経済安全保障上の観点から、日本も中銀デジタル通貨を発行すべきなのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

リブラへの警戒感はやや緩み
牽制の対象はデジタル人民元に

 G7(主要7ヵ国)財務相・中央銀行総裁会議が、オンライン形式で10月13日に開かれた。デジタル通貨、デジタル決済が今回の主な議題で、会議開催後には共同声明が出された。

 そこでは、フェイスブックが主導するデジタル通貨・リブラの発行計画を念頭に、各国に跨って利用されるグローバル・ステーブルコインなどを、「法律・規制・監督上の要件に十分対応するまではサービスを開始すべきではない」と強く牽制した。ただし、これは従来のG7やG20(主要20ヵ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議の主張を再確認したものに過ぎない。

 今回注目されるのは、中国の中銀デジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元を、名指しこそ避けながらも、強く牽制したことだ。リブラ計画は、主要複数通貨にその価値を連動させ、世界で広く利用できるように設計されるグローバル・ステーブルコインとして発行する当初計画を修正し、当面は単一通貨に紐づけられたデジタル通貨の発行へと軌道修正する方針を、フェイスブックはすでに明らかにしている。

 そのためリブラが、マネーロンダリング(資金洗浄)に広く利用され、また各国の金融政策、金融システムに深刻な悪影響を与えるリスクは小さくなったとして、G7は警戒心をやや緩めたのだろう。

 G7は牽制対象の中心を、リブラからデジタル人民元へと移したと見られる。声明文では「透明性、法の支配、健全な経済ガバナンス」の3つを、事実上、中銀デジタル通貨が満たすべき3原則として示している。