米国経済は2020年4~6月期を底に回復過程に入っている。4~6月期は前期比年率でマイナス31.7%(前期比マイナス9.1%)となったが、7~9月期はおそらく4~6月期のへこみを半分以上取り戻す回復になるだろう。
米国で新型コロナの陽性者数はピークを過ぎたとはいえ、いまだに1日当たり4万人前後も発生していることは痛手ではある。しかし日本ならば社会的なパニックが起こっていそうな感染状況でも、経済活動を復活させつつあることに、米国経済・社会の抵抗力の強さを感じることもできる。
一方、新型コロナ不況を乗り越えるために未曽有の超金融緩和による信用膨張と財政支出の急拡大が起こっている。これは米国のみならず、日本や欧州でもほぼ同様だ。このことが近い将来にインフレ率の高騰、あるいは資産バブルなどの副作用を起こすことはないだろうか。米国のマネー急増でドルの通貨価値の下落、インフレ高進、ドル相場の急落が起こると予想する論者もいる。今回はこれを考えてみよう。
結論から言うと、金融緩和と財政支出の拡大は戦後空前の規模ではあるが、制御不能になるような高インフレになる可能性は極めて低い。財政赤字の膨張もいずれ調整すべき局面が到来するだろうが、中期的な持続性にはほとんど問題がなさそうだ。
むろん、何十年も先のことは分からないが、近い将来の唯一の現実的なリスクは、極端な信用の膨張に支えられた株価や不動産の資産バブルが起こり、それが破裂する可能性だろう。
以下、順に説明しよう。