こうした3つの問題も、毎日、新入社員と顔を合わせていれば、普段の様子からうかがい知ることができるだろう。また、新入社員研修などを行うことで、現場に入る前に会社のことを知ることでギャップを小さくしたり、スキルや社内人脈もできたりしてリレーションやキャパシティーの問題は和らぐとも考えられる。
しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で、入社後即リモートワークになったり、新入社員研修を十分に行えないまま現場に配属されたりしたケースが少なくなかった。そのため、例年よりも新入社員のなかで「GRC」の問題が膨らんでいる可能性があるのだ。
「実は、当社が概算した社員1人が入社後3カ月で離職した場合の損失は、187万5000円となった。これは採用手法や社員教育の内容によって前後するが、大きい金額であるのは間違いない。しかも、新入社員は『連鎖退職』を招きやすい傾向がある。退職ドミノを防ぐためにも、離職のサインを見逃さないことが大切だろう」(越田氏)
サミットは新入社員研修を1日に圧縮
同期のつながり、仕事に不安も
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では、実際に新入社員の離職を防ぐために、どのようなことから始めればいいのか。スーパーマーケット事業を展開するサミットでは、人事部が今年から新入社員の離職を防ぐためのさまざまな施策を本格化させている。
2020年4月の新卒採用入社者は、大卒者92名と高卒者38名の合計130名。スーパーマーケットという事業の特性上、コロナ禍でも新入社員のリモートワークは行ってこなかったが、大きく昨年から変更したのが新入社員研修だ。
「実は毎年、入社直後に3泊4日の新入社員研修を行っており、そこで一般的なビジネススキルや接客技能などを学んでいる。しかし、今年は泊まりの研修は難しいと判断し、ほぼ丸1日に圧縮して行った。そのため、例年ほどスキルが身に付かないまま、店舗研修に移ったのが実態だった」(同社人事部の能力開発グループマネジャー・深瀬貴央氏)
そのほか、例年であれば2カ月に1度行われている研修も中止に。これらの影響で、今年の新入社員は同期のつながりが生まれにくくなり、スキルにも不安を持ったまま現場に配属される状態になったのだという。