久夛良木Photo by Yoko Akiyoshi

久夛良木健(くたらぎ・けん)氏と言えば「プレイステーションの父」。任天堂が圧勝していた市場に高らかに参入し、ソニーにゲームビジネスという一大カテゴリーを残した。この久夛良木氏が新たに、アセントロボティクスなるスタートアップのかじを握るという。ビジョナリー(未来を予見できる人物)は、何を妄想し、何をやろうとしているのか?全てを語ってもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

報酬ゼロでCEO
「かっこいいじゃん」

――ソニーを引退した後も、楽天や角川グループホールディングス(現KADOKAWA)などで社外取締役を務めてきました。そういった職と比べて、今回のアセントロボティクスの仕事は別格ですか。

 そうだね、僕がCEOをやるって言うんだから。

――報酬ゼロで引き受けたって、本当ですか?

 もちろん。スティーブ・ジョブズは米アップルに復帰したときに、年俸を1ドルにしたよね。覚えてる?かっこいいじゃん。

――じゃあ久夛良木さんも、アセントが軌道に乗るまでは無償で……。

 ううん、乗っても報酬はいらないかも。雇われているわけじゃないから。

 コロナが起こって、よく分かったんだ。いろんな人と話しても、みんなノーアイデアに近い。アセントは比較的若い子たちの会社なので、ここはまだいい。でも既存のブルーチップの会社(優良企業と呼ばれる会社)はだめだね。トップも中間管理職も末端の人も、何も決められない。

 だから僕がドライビングシートに座る。僕が引っ張るから、ハンドルを握らせろと思ったわけ。