チェンジリーダーの哲学#71,日本ペイント,田中正明

日本ペイントホールディングス社長インタビュー下では、グローバル化に突き進む田中正明社長に、日本企業が世界展開する際に必要な経営のあり方などについて持論を聞く。三菱UFJフィナンシャル・グループの副社長の経験を踏まえて、メガバンクに今求められていることについても語ってもらった。(ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)

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日本企業のグローバル展開
帝国主義的発想ではダメだ

――成長のために日本企業にはグローバル展開が必要です。求められる経営は何でしょうか。

 一つは「クモの巣型経営」だ。日本企業は、いまだに帝国主義的な発想をするところが多い。東京本社が一番偉くて、海外の出先は子会社だという発想だ。従って、現地でやることはすべて東京本社に報告をしてお伺いを立てなさい、そうしたら東京本社が決めてあげます、というやり方になる。僕は、これを放射線型経営だと言っている。

 例えば、ロンドンとニューヨークに拠点があり、ロンドンとニューヨークが直接に話をしたほうが物事はスムーズに進む場合でも、ロンドンはまず東京に報告し、ニューヨークも東京にお伺いを立てる。そして本社の中で調整をして、ようやくロンドンとニューヨークがつながる。これが日本の企業の国際化の実態だ。しかし、こんなものがワークするわけがない。

 僕が言っている「クモの巣型」は、今の例で言えば、ロンドンとニューヨークでどんどん勝手にやってくれと。両方で合意して、これをやりたいとなったら報告してくれと。その代わりにその時には当然投資が必要となるだろうから、財務だけはちゃんと全体を見る必要があるので、それは教えてくれ。こうしたやり方が、グローバル企業として展開していく上で、最も成長性が高い経営の仕方だと思う。

――現地にお任せで、現地の経営の暴走を招いたり、その結果損失を計上したりする企業も少なくありません。

 うちも去年、海外で2つの事業で減損損失を出した。反省があるが、結局そこの事業をきちっとフォローできていなかった。現地のマネジメントと一対一で毎月のように話をしてフォローし、彼らがやっていることを理解することが極めて重要だ。

 大事なのはコーポレートカルチャーとして彼らが困った時や問題が起きた時にちゃんと話をしてくれるような関係を作っておくことだ。困った時に早く言ってくれれば、手は打てる。減損した2つの事業についてはできていなかった。

――グローバル化していくと、経営者が日本人でなくなる可能性も出てくると思います。