その後、課内全体の売り上げは持ち直し、中にはB課長が掲げた高いノルマを達成した課員がA係長を筆頭に数人現れ、また他の課員の売り上げも急上昇した。その様子を見たB課長は得意になり10月初日の朝礼で、

「やればできるじゃないか。よし、来月からノルマを2割アップだ」

 と宣言した。

 「えーっ!!!」

 課員たちからはどよめきの声が出たが、

「何が『えーっ!』だ。君たちはこのまま会社がつぶれてもいいのか?見てみろ、他の営業課はどこも売り上げは低空飛行じゃないか。俺たちがやらねば誰がやる!それともノルマが達成できず給料ダダ下がりに甘んじるのか?」

 査定で給料が下がることを恐れた課員たちは一斉に口をつぐんだ。そしてB課長はいつものごとく大声で檄を飛ばし始めた。

課長が表彰!?我慢できなくなったA係長は…

 10月下旬のこと。C社長は、コロナ下において第1営業課の営業成績が急伸したことに対して、B課長の手腕と課員の功績をたたえ特別表彰を行うことにした。そのため就業規則の変更が必要になったので、社長室でD社労士と打ち合わせをしている最中にAが乗り込んできた。

「社長、もう我慢できません。助けてください!」

 Aは、B課長が上司になってからコロナ下にもかかわらず売り上げのノルマが増えており、自分や課員たちが自腹で商品を購入してノルマを達成していること、その結果、自分自身は生活に困り借金をする羽目になったことを話した。その事実を知りC社長は仰天した。

「私はそんな指示は出していない。むしろ各営業課長に『売り上げが低下し会社にとって大変な時期だが、今は無理をせず顧客との顔つなぎに徹するように』と再三言っている」

 横で2人のやり取りを聞いていたD社労士は、思い詰めたAの表情を見て口を挟んだ。

「この件ですが、他の課員にも事情を聞くなりして調査したほうが良さそうですね。場合によっては表彰どころか懲戒処分の対象になるかも知れませんよ。表彰の件はひとまず置いておきましょう」