長年しのぎを削ってきた牛丼チェーン大手3社。コロナ禍の今、新たな転換点を迎えているといえます。これから牛丼チェーンが勝ち残るためのカギはどんなところにあるのか。飲食コンサルタントの須田光彦氏が各社の過去の戦略や強みから分析します。
「差別化」と「選択と集中」で
勝ち残ってきた牛丼チェーン
ビジネスにおいて“差別化”と“選択と集中”が大事な要素であることは言うまでもありません。
USP(Unique Selling Proposition)という言い方で表現される、独自の強みを作り出し消費者に受け入れられ、競合に打ち勝っていくことは、どの企業も常に模索していることと思います。
飲食業界においてこの差別化と選択集中が、かつて顕著に表れていたのが、牛丼業界です。牛丼チェーンの中で歴史が最も長い吉野家が業界の中心になり、牛丼業界は成長・拡大してきました。
吉野家の創業は、日本橋の魚市場の中の飲食店でした。ターゲットは魚市場で働く人たちです。
ターゲットニーズに沿った戦略を取った結果、商材は牛肉となり、当然スピード提供、ハッキリとした味、丼提供、1杯で満足できるボリューム、日常使いが可能な価格が差別化要素となって、「牛丼専門店」が誕生したのです。
選択と集中を行った結果、そうならざるを得なかったことは容易に想像できます。
そして吉野家の創業から遅れること67年、次に登場したのが松屋です。当初はいわゆる町中華でした。