バイデン氏の
対中国政策の展開予想

 次に考えたいのが、米国が、制裁関税を用いずに、どう中国に圧力をかけるかだ。バイデン氏は制裁関税を“古い手法”とみなしている。また、バイデン氏は「ラストベルト」の有権者に配慮してTPP復帰に言及していない。

 バイデン氏が重視する国際連携に着目すると、米国は公平に各国の比較優位性が発揮されやすい環境を目指し、新しい国際連携を目指す可能性がある。その中で米国は各国と連携して中国への締め付けを強めるだろう。

 経済面においては、半導体開発、生産などの世界経済の成長を支えるIT先端分野で、米国は自国の知的財産と技術が中国に渡らないよう、規制を強化する可能性がある。韓国のように対中輸出に依存してきた国への逆風は強まる恐れがある。言い換えれば、新しい、高付加価値のモノ(ヒット商品)を生み出す技術力の重要性が高まる。その他にも、米国が中国政府から補助金を支給された企業や、人権問題に関与した疑いのある企業との取引をより厳正に規制することも考えられる。

 IT面での中国への規制強化は、米ドルの信認維持にも必要だ。3月中旬、世界の経済と金融市場はコロナショックによって大きく混乱した。事態の鎮静化に力を発揮したのが、FRBによるドル資金供給だ。現状、ドルは世界の基軸通貨として信認されている。通貨の信認が高いからこそ、FRBによるドル資金供給によって世界の株価は底を打ち、金融市場は落ち着いた。

 他方、中国は急速に「デジタル人民元」の開発と実証実験を進めている。長めの目線で考えると、デジタル化された人民元が“一帯一路”の沿線国に普及し、ドル覇権が揺らぐ展開もあり得る。米国がドル覇権を維持し、世界の基軸国家としての地位を守るには、規制だけでなく技術力強化も欠かせない。

 いずれにも共通するのは、米国にとって国際連携が欠かせない点だ。米国からの締め付けに対して中国は国家資本主義体制の強化によって対抗し、米中対立は先鋭化するだろう。それに対応するために、米国はより多くの親米国を確保し、優秀な人材を引き付けなければならない。

 単に中国に圧力をかけ、企業に国内回帰を求めるのでは、アップルのビジネスモデルは難しくなる。重要なのは、総合的なバランス感覚ある人物が対中政策の指揮を執ることだ。反対に、もしライス氏が国務長官に就任すれば、米国の対中政策への不安は高まる恐れがある。

わが国に求められる
新しい技術力の強化

 今後、わが国は、これまでになかった新しい技術力を高め、米中から秋波を送られる存在を目指さなければならない。わが国にとって、安全保障面での米国との信頼関係強化は最優先事項だ。そのために、わが国企業の最先端の製造技術開発に加え、社会のニーズに的確にこたえる技術力の重要性は高まっている。総合的な技術力の向上は、わが国と欧州やアジア新興国との関係強化にも欠かせない。

 いい例が台湾のTSMCだ。かつて、世界の半導体産業のロードマップは米インテルの方針に左右された。しかし、インテルは生産能力の向上に躓いた。その結果、世界最大手の半導体受託製造企業であるTSMCの存在感が高まった。