中国が次に目指すのは「日中韓自由貿易圏」

 中国の世論では、将来、米国が主導するTPPに対抗するには、RCEP1つだけでは不十分との声もある。RCEPは15カ国の集合体なので、中国のような人口大国もあれば、ブルネイのような小国もあり、日本のような先進国もあれば、カンボジアのような貧しい国もある。これらの国々を束ねるには、言うまでもなくさまざまな妥協と譲歩が必要だ。

 その意味では、日中韓自由貿易圏の成立はより大きな実益につながる。日本と韓国にとって、中国は最大の貿易国である。そして中国にとって、日本と韓国はそれぞれ第2位と第3位の貿易パートナーであり、第1位と第2位の輸入相手国でもある。

 また3カ国間の貿易往来も頻繁だ。日本は豊富な資本と先端科学技術を有しており、韓国は半導体分野で優位性をもっている。一方、中国は製造大国だ。その3カ国の産業と経済は相互補完関係にあり、産業融合度も高い。自由貿易圏を構築することで、互いにウィンウィンの関係を実現することができる。日中韓自由貿易圏が形成されると、この3カ国も世界の他の大国との交渉により多くのカードを使えることになり、その意義は計り知れない。

 だから、日中韓自由貿易圏、ヨーロッパと中国の自由貿易圏も早急に成立しなければならないと中国国内の世論は推しているのだ。

米国とのバランスをどう取るか

 2002年に、すでに日中韓自由貿易圏構想が出来上がり、当事者3カ国もその成立を期待している。しかし、これまで16回の交渉が行われてきたが、まだ着地できていない。いつも協定の機運が高まったところで、何らかの国際紛争が発生し、その協議が一時停止に追いやられてしまう。尖閣諸島(中国名は釣魚島)国有化事件、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備事件、日韓貿易戦争などがその典型例だ。3カ国の異なる国益が3者協議の決着を阻んでいる。

 今回のRCEPの締結は、アジア太平洋自由貿易圏の枠組みの形成に大きな一歩を踏み出したと評価していいだろうが、もう一つ、強調しなければならないポイントがある。日本、中国、韓国にとっては東アジアで初の自由貿易協定(FTA)となるため、3カ国間をまたいで事業展開する企業にとってのインパクトはもちろん大きいとみられるが、日中韓自由貿易圏の成立にも重要な推進力になるだろう。特に日中韓自由貿易圏が成立すれば、山東省や遼寧省などが最大の受益者となり、経済成長が困難に陥っている東北地域には大きな励ましになる。東北地域と山東省が寄せる関心は並々ならぬものがある。

 米国と日本は最近、しきりに「インド太平洋時代」をアピールしている。中国は表向きには、それに対して反対または批判の声を上げていないが、内心は穏やかでない。しかし、今回のRCEPに対して、インドは自ら参加を断った。中国国内からは「正直に言うと、むしろほっとした。これで中国がリーダーシップをより取りやすいアジア太平洋時代を迎えられる」という声が聞こえてきている。

 ニューズウィーク誌は、次のように報道している。「アジア太平洋圏でのアメリカの立場は、TPPがアメリカ抜きで批准された時点で既に打撃を受けている。(中略)トランプ政権はアメリカと中国の経済を切り離し、製造業の多国籍企業を中国から撤退させようとしている。だがRCEPはアジア域内の経済統合を促進し、アジアを経済的にも戦略的にも今まで以上にアメリカから隔絶するものになりそうだ」(「アジア版自由貿易協定『RCEP』の長所と短所」より)

 RCEPを見る米国の複雑な心境を語ったこの記事の指摘のように、米国とのバランスをどう取るべきかというのは、RCEPの参加国、特に中国と日本にとっては大きな課題だ。