「末梢動脈疾患は症状によって4段階に分類されます。
I度:無症状。冷感やしびれなど非常に単純で自分では気がつかない程度の症状。
II度:100メートルから200メートル程度歩くと足が痛くなり歩けなくなるが、しばらく休むとまた歩くことができるようになるような症状。これが間歇性跛行です。あなたもこの症状が起きたので受診されたんですよね」
「はい、妻に勧められました」
「奥さんに感謝してください。
III度:じっとしていても足が痛む状態。
IV度:足が壊死したり、壊疽、潰瘍に陥ってしまう状態。
と症状が進行した状態を重傷虚血肢と呼ぶのですが、そうなると目に見える症状が出ている足だけの問題だけではなくなってしまいます。
そのような方の足に傷ができた場合、進行してしまうと足を切断しなければならない状態になりますが、足の切断に至るほど症状が進行してしまった患者さんはその後の5年生存率が60%程度の大腸がんと同程度の生命予後になってしまいます」
「大腸がんですか」
「そうです。PADは単なる足の病気ではありません。足の末梢血管が狭くなるということは、心臓で言えば狭心症を起こしている状態です。悪化すれば心筋梗塞ならぬ足梗塞になるし、他の血管も動脈硬化を起こしている可能性があるので危険です。
血管は加齢とともに硬く、もろくなることはご存じですよね。特にあなたはコレステロールが高い状態が長いので、血管の壁が厚く、硬くなって弾力性を失い、もろくなっているはずです。
動脈硬化によって動脈の内腔が50%以上狭くなると症状があらわれる間欠性跛行は、動脈硬化が進んでいる方の典型的な症状です。年のせいにして病院を受診しなかったり、整形外科に行ってしまう方も少なくないのですが、血管の病気ですからね。循環器内科か血管内科の受診を進めてくださった奥様の判断は的確でした」