『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

「SNSで自分を発信しよう」という人が知らないその危険な末路Photo: Adobe Stock

[質問]
 これからの時代は「自分」を絶えず発信して人を惹き付ける人がどんどん有利になっていくと思うのですが(ブロガー、YouTuberなど……)、私は小学生の頃から「自分の考え」を表現することが非常に苦手でした。

 社会人になった今でも、発信して共有したい(共有する価値のある)「自分」がある気がしないのですが、今後どうすれば良いでしょうか?

①インプットを続けて、自然と「自分」を発信したくなるのを待つ
②多少無理にでも「自分」を発信する行動を始める
③「自分」を発信しない生き方であと半世紀生き抜く

「自分を発信する」はおすすめしません

[読書猿の回答]
 私は「自分」を発信するというのは悪手だと思ってます。ごく限られた天才でもない限り、早晩枯渇する。後はファンの囲い込みと自己演出の繰り返し(実はこれは天才にも必要ですが)→逆張り炎上狙いの道まっしぐら。

 次の記事の「私小説家」の末路(=ネタを作るために生活をめちゃくちゃにし始める)が、ネットで「自分」を発信している人達のそれにならなければいいのですが)。
なぜ私小説は勝利したか?-3分でわかる身も蓋もない近代日本文学史

 じゃあお前はどうなんだ、と問われると、できるだけ「自分」や「個性」を出さないようにしています。

 これ自体は好みの問題で、自分を押し売りしてくる書物やブログや動画が好きでない(そんなのに時間つかいたくない)からなんですが。

 逆に「私」を消すと、世界全部が、人類がこれまで積み重ねてきた知的営為のすべてが、自分の〈持ちネタ〉になります。もちろん現時点では、そのほとんどを知らないわけですけども、可能性としては、ある。自分の貧しい経験や現有知識に限らなくてもよい訳で、この方が長続きするだろうと踏んでいる訳です。