霞が関はスーパーサイヤ人だらけ?官僚のブラック労働が変わらない理由写真はイメージです Photo:PIXTA

朝7時、仕事開始。27時20分、退庁。ブラック労働は今や霞が関の標準だ。国会対応のための不毛な残業、乱立する会議、煩雑な手続き、旧態依然の「紙文化」…この負のスパイラルを止めなければ、最終的に被害を受けるのは国家、国民だ。霞が関の実態を、元厚労省キャリアの千正康裕氏の新刊『ブラック霞が関』(新潮社)から一部抜粋・編集して、官僚たちの今を紹介する。

スーパーサイヤ人ばかりが引っ張る組織

 霞が関の働き方改革はなぜ進まないのか。これだけ日本中で働き方改革が叫ばれ、厚労省や政府はその動きを後押しすべき立場であるのに、霞が関自体はなかなか変われない。そこにはやはり、役所特有の理由がある。

 キャリア官僚の昇進について、よく言われていることがある。同期横並びで出世して課長までは昇進する。その後、審議官・局長に昇進する人と肩たたきで天下る人に分かれる。出世レースの最後の事務次官は同期で一人出るかどうか。

 これは、間違いではないが、少々誤解を招く説明のように思う。実は、中央省庁に採用されたキャリア官僚の職場というのは霞が関だけではない。厚労省であれば、都道府県労働局や地方厚生局などの地方支分部局もある。企業で言うと支社のようなものだ。あるいは、それぞれの行政分野の実務を行う独立行政法人や国立の機関もある。これは企業で言うとグループ会社のようなものだ。最近だと官民交流といって、民間企業に出向するケースもあるし、県庁や市役所に出向することもある。さらに、大使館、国際機関、JETROなどに出向して海外で勤務を経験したり、JICA専門家として途上国の制度設計を支援することもある。また、大学や研究機関に出向して教育や研究を行うこともある。また、霞が関内部でも他省庁への出向もある。

 つまり、霞が関で働いているのはキャリア官僚の一部なのだ。