先日、世界中で話題になったイーロン・マスクのスペースXによる巨大ロケットの打ち上げ。実はグーグル、アマゾン、フェイスブック……ITの巨人たちもまた例外なく宇宙に巨額投資している。彼らは何を狙っているのか? これから一体何が始まるのか? 宇宙ビジネスは、私たちの生活・仕事を激変させる! 清水建設宇宙開発室、JAXA出身の宇宙ビジネスコンサルタント・大貫美鈴氏の新刊『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から、内容の一部を特別公開する。
出典:www.flickr.com/photos/spacex/40143096241/
なぜITの巨人は宇宙に巨額投資するのか?
「地球のビッグデータ」を狙うゴールドラッシュ到来
宇宙開発というと、国や政府がやっていることだと考える人が多いと思います。しかし民間による「宇宙ビジネス」が、この10年あまりで一気に加速しています。
例えば、電気自動車のテスラで有名なイーロン・マスクが、ロケットを宇宙に打ち上げている会社も経営していることは、日本ではあまり知られていません。その会社スペースXは、すでに50回以上ロケットの打ち上げを行っているだけでなく、NASAに代わって地球の軌道上にある国際宇宙ステーション(ISS)への、アメリカの補給便サービスまで引き受けているのです。スペースXが手がけているのは、これまでNASAが打ち上げてきた大型ロケットの事業化です。
世界最大のオンライン・ショッピングサイト、アマゾン・ドット・コムの創業者、ジェフ・ベゾスも、ロケットを開発する会社ブルーオリジンを設立しています。将来、宇宙に100万人の経済圏ができることを想定し、有人宇宙飛行を見据えて安価で安全なロケットが必要になると考え、宇宙旅行ができるサブオービタル(準軌道)機や大型ロケットの開発に取り組んでいるのです。すでに試験機による宇宙空間までの飛行実験に何度も成功しています。
しかも驚くべきことに、ブルーオリジンにはアマゾンから年間1000億円の投資を行う、とジェフ・ベゾスは発表しています。これは日本の宇宙開発予算の、実に3分の1もの規模になります。
アマゾンだけでなく、グーグル、フェイスブック、マイクロソフト、アップルを加えたIT企業のBIG5と言われる巨大企業、さらにはシリコンバレーの企業やベンチャーキャピタルも、宇宙ビジネスに熱い視線を送っています。
「ペイパル・マフィア」の異名を持つ、シリコンバレーで絶大な影響力を持つ投資家ピーター・ティールや、スカイプやホットメール、テスラへの投資家として世界的に有名なドレイパー・フィッシャー・ジャーベットソン、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ、そして日本のソフトバンクの孫正義氏もまた、宇宙ビジネスに巨額の投資をしています。実際にシリコンバレーでは近年、数多くの宇宙ベンチャーが生まれています。
IT関連の技術や資金が流れているのは、宇宙をインターネットの延長として見ているからです。宇宙にネットワークを張り巡らせることで、「地球のビッグデータ」が手に入る。これが、さまざまなビジネスを生み出すと期待されているのです。