「もうダメだ死ぬしかない」は間違い

樺沢 あくまでも精神科の診断は「仮説」でしかありません。発達障害に限らず、精神疾患全部に言えることなんですが、症状から目ぼしいものをピックアップして診断基準にしているので、目の前の患者さんの「状態」を見て判断する以外に方法がない。
だから、例えば以前はASD(自閉スペクトラム症)と診断された人が、衝動性が強くなってくれば、ADHD(注意欠如・多動症)と診断が変わる可能性だってあるし、両方の症状が併存している人も少なくありません。また、二次障害として、うつ病などを併発する人もいます。
つまり、医者が下す診断にこだわる必要はなく「困っていることは何か」、それに「どう対応していくか」ということに注目する方が、症状は改善されやすくなるんです。でも、多くの人は診断の段階で止まってしまって、その後のTO DOまで行こうとしないんですよね。

借金玉 はい、僕も先生と全く同じ考えです。それに加えて、その症状が「どのレベルか」という視点も重要だと思います。
僕のところにも「自分が発達障害ではないか」という悩みが寄せられますが、ある時、会社で管理職を務めているという方から「自分は仕事のミスが多すぎて発達障害ではないかと落ち込んでいる」と相談されたことがあります。ご苦労されているのはわかるのですが、僕に言わせれば、同じ会社で10年以上働けて、管理職になれているという時点で本当に素晴らしい。社会生活をきちんと送れているわけで、まず問題はないんじゃないかと。

樺沢 そうそう。「発達障害」というラベルは、不安をあおるためではなく、悩んでいる状況を改善するために作られたわけですから。
でも、大抵の人は、自分が何に悩んでいるかわからないんですよね。僕の個人的な感覚ですけど、自分が困っている問題に必要な情報を調べて解決できる能力がある人って、世の中で1割以下じゃないかな。そもそも大半の人は、「自分が悩んでいること」を言語化できていない気がします。

借金玉 それ、よくわかります。発達障害というラベルを貼られると、全てを発達障害のせいにして思考が止まり、かえって自分の困り事に対する解像度が落ちてしまうんですよ。この気持ちは僕自身よくわかります。
「どうせ自分は障害者だから無理」「全部ダメだ。僕は動けない」、最悪の場合は「死ねばいいや」となる。でも、そういう人の相談にのって具体的な悩みを整理すると、真っ先にやるべきことは「コンビニに行って、遅れている光熱費の支払いをする」とかなんです。意外とひとつひとつの問題は小さいんですね。対処する範囲や事柄を明確にすると、死ぬほどのことではないとわかる。
別に発達障害じゃなくても、大事なものをすぐになくしてしまうとか、部屋が汚いとか、そういう生きづらさを抱えている人は世の中にたくさんいます。だからこの本は、読者が発達障害の人に限らず、多くの人が生活をよりラクに、快適に送るためのヒントとして読んでもらえたらと思っています。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家 。1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。 最新刊は『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)。シリーズ70万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)をはじめ、16万部『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)、10万部『神・時間術』(大和書房)など、30冊以上の著書がある。
YouTube「精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル」