税務署の言い分とは?

 それに対して税務署は、

「私たちは、すべての資料を確認したうえで指導をしているわけではなく、あくまで一般的な見解を伝えたにすぎないから、責任は一切ない」

「納税者には、こういった事態が起こりえるので、実際の申告書作成は税理士に依頼するように伝えている」

 という回答をするだけで、取り合ってもらえませんでした。

 このような事態を避けるためにも、難しい判断が求められる申告については、税務署のアドバイスだけで作成するのはやめたほうがいいかもしれませんね。

 ちなみに、相続税申告を税理士に依頼している人の割合は、2015年の税制改正前(基礎控除4割引下げ前)のデータでは10人中9人でした。

 しかし現在、自分で申告書を作る方は格段に増えたと感じています。

 その理由は、2015年の税制改正から、私たちが作成した相続税申告に税務調査が入る割合が格段に減ったためです。改正前は私たちが作成した申告書でも10%くらいは調査に選ばれていましたが、今は1%以下になっています。

 しかし、国税庁が公表するデータを見ると、税務調査の件数自体は税制改正前後で変わりません。何が起こっているのでしょうか。

 恐らく、税理士をつけずに自分で申告書を作成した納税者への税務調査が増えたのだと推察しています。税理士が作成している申告書より、素人の方が作成した申告書のほうが、圧倒的に追徴課税が取りやすいですからね。

 相続税の節税をしなくてもよく、税務調査の心配も一切ないという方は自分で申告書の作成に挑戦するのもよいでしょう。そうではない方は専門家のアドバイスを聞くのをオススメします。