NTTグループの「逆襲」の成否を決める鍵の一つが「技術力」だ。特集『デジタル貧国の覇者 NTT』(全18回)の#17では、基礎研究に強いとされるNTTの実力を、日立製作所やGAFAなどと比較しながら明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
基礎研究に必要にこだわるNTT
「聖域」R&D改革に踏み込んだ日立
トヨタ自動車や三菱商事など日本を代表する企業や、米国のインテル、エヌビディアといった世界的なテック企業がNTTと相次いで提携している。NTTが「モテ期」を迎えているのは、ずばりR&D(研究開発)に定評があるからだ。
NTTの実力は過去の実績からも明らかだ。ファクスや携帯電話が普及したのも、インターネットを支える光ファイバー網が整備されたのも、NTTの技術があってこそである(下表参照)。
NTTのR&Dの特徴は、基礎研究への執拗なこだわりにある。一般論で言えば、業績が沈むたびに、企業の基礎研究は短期で稼げないという理由でリストラの対象となってきた。研究者は浮世離れした存在とみられ、研究所は「象牙の塔」などとやゆされることも多かった。
ノーベル賞を七つも受賞し、通信などの技術開発で金字塔を打ち立てた米国のベル研究所ですら、親会社が代わったり分割されたりする中で縮小を余儀なくされ、その輝きを失ってしまった。
こうした風潮にあらがうように、NTTは地道に基礎研究を続けて希少価値を高めてきた。中国の通信機器メーカー最大手、ファーウェイが欧米を脅かす存在になるほど躍進し、相対的にNTTへの期待が高まったという事情もある。
ではNTTのR&Dの実力を、研究開発力に定評のある日立製作所と比べながら見ていこう。