澤田純・NTT社長は通信に次ぐ新規事業のぶち上げにも熱心だ。電力事業と並び注力しているのが不動産事業。澤田社長は街づくり推進のための新会社を設立し、グループの莫大な“眠れる”不動産活用に本腰を入れる。不動産事業はNTTドコモの完全子会社化で膨らんだ借金の圧縮にも一役買いそうだ。特集『デジタル貧国の覇者 NTT』(全18回)の最終回では、巨大不動産会社に変貌するNTTの実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
グループ資産活用が「中途半端」
事業再構築に乗り出したNTT澤田社長
数年前の正月。当時NTTの副社長だった澤田純氏と、NTT都市開発社長だった中川裕氏は酒を酌み交わしていた。2人は京都大学出身の同期入社(1978年)で、年に数回は酒席を囲む気心の知れた間柄。2人の会話はNTTグループの保有資産の活用に及んだ。
「(本格的な活用を)やろうよ」と熱く語る澤田氏に対し、中川氏は「そうだけど、ちょっとじっくり考えようぜ」と応じた。
澤田氏は2018年6月、NTTの社長に就任すると、早々に事業再構築に着手した。10月に当時上場していたNTT都市開発のTOB(株式公開買い付け)を発表。NTTファシリティーズと共に街づくり新会社のNTTアーバンソリューションズにぶら下げ、中川氏を新会社の社長に据えた。新会社はグループ全体の不動産開発の窓口となった。「せっかくデベロッパー(NTT都市開発)がいるのに、『今の状態じゃ中途半端』と問題提起したのでしょうね」と中川氏は振り返る。
ではNTTが本気を出せば、三菱地所や三井不動産といった大手不動産会社を脅かす存在になり得るのか。動き始めた不動産プロジェクトはコロナ禍でもうまくいっているのか。じっくり検証してみよう。