NTTグループのはびこる保守的なカルチャーを変革するために、澤田純・NTT社長は外部人材の登用を積極的に行う構えだ。その代表例が、元経済産業省幹部の柳瀬唯夫氏だ。安倍晋三政権の首相補佐官時代に加計学園問題で脚光を浴びた人物を、敢えて登用した真意はどこにあるのだろうか。特集『デジタル貧国の覇者 NTT』(全18回)の#16では、世間を騒がせた柳瀬氏本人にインタビューを敢行した。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
アクセンチュア・IBMに劣る
NTTの「絶望的な知名度」
――澤田純・NTT社長とお知り合いだったことが縁で入社されたのですか。
経済産業省を辞めて無職でぶらぶらしていたときに、澤田さんから会いませんかと申し出があって、会ったら(NTTに)来ませんかと言われました。
それまで仕事上での接点は全くなくて、澤田さんが副社長だったときに複数で会う機会があったくらい。まず2019年に社外取締役として、20年6月から執行役員(海外事業を統括する中間持ち株会社NTTリミテッドの副社長も兼任)としてNTTに加わりました。
――澤田さんからはどんなことを期待していると言われたのですか。
僕は、経済産業省時代に情報通信って担当していないんですよね。だから自分で聞いてしまいました。通信のことはまるで分からないですが、私に何を期待されているんでしょうかと。そしたら澤田さんからは、「あなたにそんなこと期待していない」ってはっきり言われました(笑)。
要は、海外でNTTの知名度を上げる仕掛けを考えてほしいということでしたね。ちょうどNTTが英ロンドンにNTTリミテッドの本社を置くタイミングでしたから。
NTTって、日本では皆が知っている大変立派な会社ですけれど、海外では驚くほど認知度が低いんですよ。海外で買収した企業の規模もそこまで大きいわけではないので、なんとなく日本の通信会社なのかなという程度。まして、グローバルでビジネスをやっているなんて全く知られていません。
で、NTTのグローバル部隊は「アクセンチュア・IBMに追い付け追い越せ」なんて言っていますけれども、最初に顧客を訪問したときに「私はこういう者でございまして」と名乗って会社説明から始めないといけない。これは明らかに大きなハンディキャップですよね。
――世界の競合に比べて周回遅れになっているのですね。そうした一敗地に塗れた状況で、門外漢である柳瀬さんはどんなこと始めたのですか。