NTT帝国の逆襲#9Photo by Masato Kato

NTTによるNTTドコモ完全子会社化を機にドコモ社長に抜てきされた井伊基之氏は、社内の反発も覚悟の上で、旧来のドコモの問題点をずばり指摘した。特集『デジタル貧国の覇者 NTT』(全18回)の#9では、ドコモの井伊社長の豪腕ぶりが際立つインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

NTTグループの中核となるのに
奮起せぬ社員は辞めて結構だ

――NTTドコモはNTTグループの中でどんな役割を果たすべきですか。

 まず、NTTドコモは国内通信キャリアの3番手ですが、これは脱却しなきゃいけません。売り上げでも利益でも「筆頭」にならなければ駄目です。NTTグループの稼ぎ頭であるドコモがKDDIやソフトバンクに負けていては、投資家はNTTに投資してくれません。

 でも僕は、筆頭になるだけでは満足しません。ドコモは「横綱」であるべきなのです。つまり、自分だけで秘密裏に技術開発をするんじゃなく、オープンにやって仲間を増やすとか、通信インフラの標準規格作りに貢献するとか、そういうことです。国や世界のためにもなるという発想がないと、横綱にはなれません。

 ドコモの利益が下がった原因は2年前に表明した「お客さま還元(値下げ)」です。収益が2000億円くらいドーンと落ちた。私は当時、NTT副社長で、社内につくった「強化ワーキング」の中で、ドコモのV字回復について議論を戦わせました。

 ドコモはそこに、コスト削減などの改善策を出してきたけれど、目標の数字には届かない。だから、僕は言いました。「目先のコスト削減では限界がある。NTTコミュニケーションズなどのグループのアセットを使わないと難しい」と。