公立大学無償化よりも
大切なのは高卒率の向上

 バイデン氏が掲げる公立大学の無償化は、州立大学全体を対象とするのか、コミュニティー・カレッジ(日本の短期大学に相当)だけに絞るのか、その場合、コミュニティー・カレッジから4年制大学への編入枠を増やすのか、などを考えなければならない。学生ローンの問題が注目されている中、多くの米国の優秀な学生が無償化された大学を選ぶのはほぼ間違いないからである。このため公立大学の無償化は、大学ランキングを左右するだろう。

 しかし、その前に必要になるのが、全米の少年少女をまずは「高卒」にするという政策だ。その実現後、初めて公立大学の無償化が意味を持つ。米国の公立高校は無償ながら、低所得地域では中退者数の多さや、高校の定員オーバーという問題を抱え続けてきた。つまり人種差別問題をなくす第一歩は、大学の無償化などではなく、その手前にある黒人やヒスパニックの少年少女の高卒化を進めることなのだ。

 これは故ロバート・ケネディ司法長官が語った黒人差別問題撤廃の第一歩でもあるが、民主党進歩派の議員の中には、改めてこれを主張する声が出始めている。

 バイデン氏は、進歩派が実質的な「アメリカ・ファースト」政策を求める以上、トランプ政権の路線を大きく変えられないと考えている。しかも国民受けする新政策は、いずれも財源問題を抱えたいばらの道でもある。米国という大時計の振り子が今、思わぬ方向に振れようとしている。