家計簿アプリや企業向けのバックオフィス向けクラウドサービスなどを手がける「マネーフォワード」を2012年に創業した辻庸介氏。今でこそ国内でも代表的なフィンテックの会社となったが、起業が成功するまでは苦労の連続だった。その辻氏が、挑み続けること、経験を積むことの大切さを語る。(ダイヤモンド・セレクト「息子・娘を入れたい会社2021」編集部)

*本稿は、現在発売中の紙媒体(雑誌)「息子・娘を入れたい会社2021」の「Special Interview あの人が語る新しい時代の生き方・働き方」を転載したものです。

辻 庸介 Yosuke TSUJI 1976年生まれ、大阪府出身。京都大学農学部卒業、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー、マネックス証券を経て、2012年にマネーフォワード設立。個人向けの家計簿アプリ「マネーフォワードME」や企業向けのバックオフィス向けクラウドサービスがヒットし、日本のフィンテック関連スタートアップとして初めて東証マザーズへの上場を果たした。14年にはケネディ米大使より「将来を担う起業家」として米国大使館賞を受賞している。

「僕はキャリアという言葉は嫌いなんです。そんなに予定通りいかないですから」

 傍目から見れば、理想的なキャリアを重ねているように見える辻庸介氏は、インタビューの冒頭でそう語る。現在の「いい会社」と思われている会社は、10年後にはだいたい「悪く」なっている(笑)。だから就活のとき、親の価値観を押し付けるようなことは、子どもに言わないほうがいい、とも言う。

 辻氏は、京都大学農学部を卒業後にソニーに入社した。学生時代は、グローバルで活躍するビジネスパーソンになりたいという思いと、インターネットがどうやらすごいらしいという認識があり、海外でも存在感のある日本のメーカーに就職したかったからだ。

 ところが配属されたのは、理系出身ということもあってか経理部。3年後に社内募集に応募して、起業したばかりのマネックス証券に出向した。インターネットを使って個人に機関投資家レベルの金融プロダクトを提供する、という松本大(おおき)社長のビジョンに共鳴したからだ。

「ところが、会議に出ても、金融の言葉が分からない。当初は、“お前は使い物にならないから、とりあえずメモでも取っておけ”と言われて、悲惨な議事録を取っていました(笑)。そのとき思ったのは“ソニーの3年はマネックスの3カ月だな”ということ。オペレーションが良く出来上がっていて、役割が決められている大企業に比べて、ベンチャー企業では何でもやらされるので、カオスではありますが速く経験は積めるんです」

 その後、マーケティング部や戦略事業部で、提携・M&A・マーケティングなどに携わった。ビジネスパーソンが成長するためには、経験が全てだと、辻氏は考えている。