担当者同士で交渉している場合、合意する相手は目の前の担当者ではなく、そのバックにいる上司や会社であることが多い。それを逆手にとり「決裁権がない」ことをカードとして使う戦略もある。新著『交渉上手』を上梓した弁護士の嵩原安三郎氏が、決裁権がない同士で「共犯関係」を構築し、合意形成への突破口を開く交渉テクニックを解説する。
「交渉する相手=合意する相手」
とは限らない
交渉は目の前の相手とするものですが、じつは「交渉する相手=合意する相手」とは限りません。
経営者レベルの人間が直に交渉するのは例外的であり、多くの場合、交渉にあたるのは担当者です。みなさんも、その案件のイチ担当者として交渉に臨む場合がほとんどでしょう。
担当者とは、言い換えれば「窓口」、つまり「上司や会社を代弁する立場」です。
ということはつまり、担当者同士で交渉している場合、合意する相手は、目の前の担当者ではなく、その担当者のバックにいる上司であり、会社なのです。
当たり前といえば当たり前の話ですが、この点をしっかり認識できていると、交渉の際の話し方にも、違いが出てくるはずです。
たとえば、「でも、御社もコストカットが課題なんですよね。上司の方から、ぶっちゃけ、どれくらい下げてこいって言われてます?」という具合に、相手のバックにいる上司、会社の存在に言及するのです。