コロナ困窮の若者に自宅を提供

クルマ、家、貯金は不要! 人は手放せばもっと成長できるPhoto by 竹井俊晴

中野:一人の時間が増えるのはいいことだと思います。寂しさや孤独を感じる時間は、人間の成長にとって重要です。一方で、人と交わる時間も同じくらい重要。つまりはバランスです。

 僕はこのコロナ禍の10ヵ月ほど、収入を失って家賃も払えなくなった若者たちに自宅の一部を提供してきました。狭い家に6人くらいを住まわせていると、「一人の時間が欲しいな」と思うようになる。けれど、「休業補償がようやく入ったから」と若者たちが出ていくと今度は寂しくてしょうがない。つくづく、人間は都合よく環境に慣れてしまうものだと実感しました。

川原:自宅を提供されていたというのも、すごい話ですね。

中野:僕は、大金は持たない主義で、若い頃から寄付をしてきたから、お金持ちではないのですが、世の中の金持ちはもっとこういう人助けをやるべきじゃないか、と思いますよ。

 政府が配る10万円に文句を言うより前に、個人ができることもあるはずです。民間企業もお上の指示待ちではなく、もっと知恵を絞って思い切った行動をしたほうがいい。

 例えば、本当に困っている若者が駆け込むのはいわゆるサラ金、消費者金融なんですから、もっと緩和策を敷いて即金で借りやすくしてあげればいいはずです。返せない分は政府が補償すればいい。こう言う時はスピードが何よりも大事なんですから。

 消費者金融の事業者は、若者がもっと気軽に寄れるように、カフェを併設したりして明るい雰囲気を出せばいい。

川原:現実の本質を見ていらっしゃいますね。それに気づいても言えない人が多いのに、中野さんは発言できるのは余計なものを全部捨ててきたからでしょうね。

中野:消費者金融のイメージが悪いのは、そこに行かざるを得ない人たちを差別しているからでしょう。僕は、社会にとって必要な金融機能だと思いますよ。

川原:どうプロデュースするかという問題なんでしょうね。弱者を救う少額貸出の金融システムとして、グラミン銀行は社会的評価も高いけれど、日本の消費者金融はコソコソと行くところだというイメージがあります。

中野:まさにブランディングだと思います。