「古典」は、関心を持たれ続けることで古典たり得る。その意味でも書名が有名な『たけくらべ』は、まごうことなき古典だ。しかし同書の内容を説明できる人はどれだけいるだろうか。遊女とお寺の子の淡い恋物語を描いた樋口一葉『たけくらべ』。その内容と価値をあらためて確認しよう。(ライター 正木伸城)

遊女とお寺の子の恋物語  『たけくらべ』、現代との隔たりが気づかせるものPhoto:工場長 / PIXTA

 5000円札の肖像である女性の名を、すぐに言えるだろうか。

「樋口一葉」。彼女の肖像がお札となった当時、「樋口一葉って誰だっけ…?」という人は多く、今も彼女の代表作『たけくらべ』と、その作者である樋口一葉の名がすぐにリンクしない人は多いかもしれない。

「古典」は、関心を持たれ続けることで古典たり得る。その意味でも書名が有名な『たけくらべ』は、まごうことなき古典だ。しかし同書の内容を説明できる人はどれだけいるだろうか。2024年に紙幣のデザインが刷新され、5000円札の肖像も替わる。その前に『たけくらべ』の内容と価値をあらためて確認したい。

『独学大全』(読書猿)という書籍に興味深い表現があった。