今の株価は異常なほど割高なわけではないと説得力を持って論じるには、市場環境に根本的な変化が生じたと説明するしかない。米連邦準備制度理事会(FRB)が原因でそうした変化が実際に起きた可能性がある。ただし、投資家はその判断が間違っていた場合、高い代償を支払うことになるかもしれない。今年は、新型コロナウイルス危機で経済が大きな打撃を受けながら、株価は急落したあと、勢いよく回復して最高値をつけるという奇妙な一年だった。その結果、標準的な尺度で見ると、バリュエーションはめったにない高水準に達している。そうなるとこれまでは不愉快な結果に終わることが多かった。S&P500種株価指数の予想株価収益率(PER)は22倍で、ドットコム・バブル以来、最高水準にある。過去10年のインフレ調整後の1株当たり利益――経済学者のロバート・シラー氏が広めた評価法――も約20年ぶりの高水準を付けている。米国の国内総生産(GDP)に対する米国株の時価総額の比率――ウォーレン・バフェット氏はこれを「一つの時点のバリュエーションを測る最良の尺度」と言ったことがある――は現在、ドットコム・バブル時代のどの時点よりも高い。