バイデン新政権誕生による米国からの圧力緩和、原油価格上昇などでメキシコの通貨と株価は上昇し、金融市場からの期待は高まっている。しかし、上向かぬ家計心理、落ち着く気配のないインフレ、高止まりが続く失業率などメキシコ経済は依然浮上しておらず、先行き不透明な状況が続いている。(第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)
米国経済堅調を背景に資金流入
株価や通貨ペソが上昇
2020年の世界経済は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受ける形で大きく下押し圧力が掛かる事態に直面した。
その後は当初の感染拡大の中心地となった中国で感染封じ込めが図られて経済活動の正常化が進んでいるほか、欧米など主要国でも感染拡大が一服して経済活動が再開された結果、製造業を中心とする企業マインドは改善するなど景気の底入れが進んできた。
しかし、足下では欧米など主要国において感染が再拡大しており、行動制限が再強化される動きが広がっている上、一部の新興国でも感染が再拡大し、感染収束の見通しが立たない状況に見舞われるなど、景気回復の流れに冷や水を浴びせる懸念が高まっている。
一方、国際金融市場は全世界的な金融緩和の実施を背景に“カネ余り”の様相を一段と強めている。ワクチン開発の進展を理由に世界経済の回復期待が高まり、株式を中心に資産価格が上昇傾向を強めるなど活況を呈している。
米大統領選でのバイデン前副大統領の勝利を受けて、次期政権も財政出動による景気下支えに動くとの期待を反映して米ドル安圧力が強まっている。一部のマネーはより高い収益を求めて新興国に回帰し、国際金融市場の活況を後押しするなど、実体経済の動きと対照的な状況にある。
ただし、このように国際金融市場は“リスク・オン”の様相を強めていることを背景に、経済面で米国経済との連動性が高いメキシコでは、足下の米国経済の堅調さも追い風に資金流入の動きが活発化している。通貨ペソ相場や主要株式指数は底入れの動きを強めている。