新卒採用市場において、昔から高い人気を誇る「体育会学生」。しかし実のところ、彼らの就職活動は部活最優先による時間的な制約などによっておざなりになり、早期離職の原因の一つである「入社後ギャップ」につながることもあるという。そうした前提がある中で起きた新型コロナウイルスの感染拡大で、彼らの就活はどう変わりつつあるのか。22年卒の体育会学生が就活を成功させるために覚えておくべきポイントと併せて紹介しよう。(ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)
週6日練習も当たり前
レギュラーほど就活できない実態
「うちの子は一流大学の体育会でレギュラー。いい会社に入れて当然」
体育会学生を持つ親の中には、こうした高い期待を持つ人は多い。しかし同時に、「部活ばっかりで就活を全くしていない。うちの子は大丈夫なのか」と不安を募らせている親もいる。実は体育会学生の多くが、親の期待に反して就活に力を入れられず、後々悔んだりするケースが散見されるからだ。
彼らが就活に力を入れられずにいる最大の要因が、多忙すぎるスケジュール。体育会の部活では週6日練習もザラで、4年生も現役で活躍するため、とにかく時間がなく、就活に動ける時間が細切れで集中しづらいのだという。
「ウインタースポーツを除いた多くの体育会のオフシーズンは12月から1月末頃までしかない。4月からのリーグ戦などに向け、2月には全体練習が再開されるので、実質的に就活に多くの時間を割けるのはわずか2カ月程度といっていい」(体育会学生の採用支援を行うアスリートプランニング・中村祐介社長)
さらに中村社長は「レギュラーの学生であるほど時間がなく、エントリーする企業も一般の学生の半分から3分の2程度にとどまる」と語る。
また、時間がないのを理由に部活の先輩たちが行ってきた就活の方法を踏襲することは、入社後ギャップにつながりやすいという。体育会学生のキャリア相談や面接アドバイスなどを行うリクナビ就職エージェントのキャリアアドバイザーである川原優氏は、よくある体育会学生の就活の落とし穴について次のように語る。
「OBやOGが勧めてくれた企業の選考を『先輩に言われたから』『大手だから』と十分に考えず受けたり、リーグ戦で忙しいからと1社しか受けなかったりするケースもある。きちんと自己分析しないまま選考に臨んで内定を得ても、入社後ギャップにつながる可能性があるため注意が必要だ」
近年ではインターネットなどで、気軽に就職に関する情報が得やすくなったこともあり、先輩に勧められた企業にそのまま入社するのではなく、自分で就職先を探す学生も増えつつあるというが、レギュラーなどで忙しい学生ほど就活と部活のバランスを考えつつ、行動することが大切だろう。