こうした仕事と夢の両立は、「副業」の概念とも重なるだろう。

 コロナ禍の20年8月、ある転職サイトが、Z世代を含む20代男女に聞いた調査でも、「勤務先で認められるなら副業したい」との「副業願望」を持つ人が、72%にも上った。

 最大の理由は「収入を増やしたい」(7割弱)だが、2位と3位は「収入を得る手段を複数持っておきたい」と、「好きなことや興味のある仕事に挑戦してみたい」(20年「Re就活」〈学情〉調べ)。

 物心ついたころからずっと、テロや不況、大きな災害(同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災ほか)に見舞われてきた彼らは、「いざというとき」が明日訪れるかもしれないと身構えている。

 だからこそ、転ばぬ先のつえは、1本より2本あったほうが安心。先の3人のように、自分の未来の方向性を、あえて一つには絞りたくないのだろう。

 コロナ禍での取材でも、「できるだけ多くの可能性を残して、将来、つぶしが利くようにしたい」との声を、どれほど聞いたか分からない。

Z世代の価値観は
“先祖返り”している!?

 加えて、「サラリーマンのような既存の仕事に、なりたい職業がない」という側面もありそうだ。

 関西大を卒業、現在「プロ無職」を名乗って活動する「るってぃ」さん(29歳)は、小学6年生のとき『13歳のハローワーク』(村上龍著/幻冬舎)を読んで、「軽く絶望した」とのこと。

「オカンから渡されて読んだ本には、500以上の職業が書いてあった。でも、どれ一つとして『やりたい』って思える仕事がなかったんですよね」

 だからこそ彼は、「なりたい」を一つに限定しなかった。そのおかげで、いったんはアパレルに就職したものの辞職、3年前(18年)からは「プロ無職」という生き方そのものに企業スポンサーが付き、いまやユーチューバーやダンサー(ブレイクダンス)、アーティスト、詩人と、ジャンル横断的に活動している。

 将来不安が強い、しかも既存の仕事に「なりたい」と思える職業がない。だからこそ、目指す方向性を一つに絞らず、「副業」感覚で夢を追う……。

 一見すると、無謀に見えるかもしれない。だが考えてみれば、副業は江戸時代から存在したようだ。時代劇を見ても、下級武士が幕府に仕えるという「本業」の合間に、傘張りやちょうちん作りをするシーンが度々登場する。また明治時代の農家が、副業として蚕を飼って生糸を生産していたのも、周知の通り。

 これらも、不安定な収入を支えるため、あるいは不安な生活の中で「いざとなっても、別の道(収入源)があるから大丈夫」といった心の平穏を得るためであったに違いない。

 これに対し、「生き方を一つに絞る」という概念は、昭和の高度成長期に急増した、サラリーマンに多く見られた概念だ。

 なぜ一つに絞れたのか、会社に忠誠を尽くせたのかは、言うまでもない。バブル経済が崩壊するまで、日本には「終身雇用制」、つまり「会社が一生守ってくれる」という制度が存在したからだろう。

 でももはや、そんな時代ではない。Z世代は既に、学生時代からそれを強く認識している。「なりたい職業がない」は、昭和に定着した数多くの仕事が、既に「賞味期限切れ」を起こしていることの証しとも見てとれる。
 
 裏を返せば、Z世代は時代遅れとなった昭和・平成の雇用システムに見切りをつけ、副業という「先祖返り」の志向に新たな活路を見いだそうとしている、ともいえよう。

 彼らの7割以上が「副業したい」と考えるいま、企業や社会も、そんなZ世代の思いを後押しすべきではないだろうか。