オーナーの仕事を楽に。
5分前入店、5分後出店
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を『ワークマン式「しない経営」』で初めて公開。本書が初の著書。「だから、この本。」でも5回のインタビューが掲載された。
内田:新業態で一般客を相手にするようになると、オーナーの仕事は忙しくなっているのではありませんか。
土屋:現在は、お客様が2倍程度になり、仕事量は増えました。その一方で、新規開店すぐから多くの売上が見込めるようになりました。若手の店長が増えているのはそのためです。
内田:オーナーの1日のすごし方も変わりますよね。
土屋:売上が今の半分くらいだった頃は、夫婦で時間を分担し、1日6時間くらいずつ働くのが標準でした。お客さんは作業員や職人さんですから、仕事前の朝と仕事後の夕方が忙しい。一方、昼間はゆとりがあって「1日に文庫本を1冊読める」と言われていました。
現在は、日中に一般のお客様がいらっしゃいます。そこでオーナーには極力、省力化で経営してもらっています。
内田:運営の仕組みをシンプルにすることによって、比較的ラクに経営できるようにしているのですか。
土屋:はい。ワークマンの店舗の大半は午前7時から午後8時まで。午後8時に店が終わったら、午後8時5分に帰ることをお願いしています。レジは翌日の午後2時までにしめればいい仕組みです。朝7時に開店しますが、店に入るのは6時55分でいいと言っています。
内田:ワークマンの「頑張らない」「しない」は加盟店まで普及しているのですね。
土屋:レジは現金とカードのみでポイントカードもありません。店長の仕事は、品出しとレジ打ちだけを理想にしています。発注については「自動発注」といって一括発注ボタンを押すだけで可能です。オーナーの負担になることは一切やらないと考えています。
内田:パパ・ママでもラクに経営できる仕組みですね。
土屋:「細く長く」がいいと思っています。ワークマンの加盟店継続率は99%で、長期的な関係を築いています。加盟店とは長期的なおつき合いをしています。みなさん72歳の定年まで続け、子どもたちに引き継いでいます。いまや親子2代はあたりまえになっています。
内田:接客はどうですか。相手が職人さんであれば、店長より服や道具のことがわかっているので任せておけばいいと思うのですが、一般客を相手にすると必ずしもそうはいかないのでしょう。そのあたりはどうされているのですか。
土屋:半分以上の来店者が製品情報を知っていることを前提にしています。
内田:店はピックアップの場として考えてほしいと。
土屋:そのためにアンバサダーマーケティングを行っています。当社のアンバサダーからのSNS発信はまだ全体の10%程度ですが、それが拡散して90%のSNS発信を誘発しています。
内田:来店前に買いたいものを調べてくる。それなら接客は不要ということですね。