粉飾決算問題で経営危機に陥ったオリンパスの提携先の座を射止めたのは、当初から本命視されていたソニーだった。ソニーは500億円を出資してオリンパスの株式を11.28%取得し筆頭株主になるとともに、医療事業の合弁会社を設立。医療分野に本格参入する。
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自慢の花嫁を紹介しようと盛り上がる花婿と、少々きまりが悪そうな花嫁。例えるならばそんな光景だった。
10月1日、東京都内の記者会見場。ステージの上でフラッシュの嵐を浴びるソニーの社長兼CEOの平井一夫氏は、白い歯を見せながらカメラマンのポーズ要請に気さくに応じていた。平井氏が離さぬようにと手を握り締めていた花嫁は、この日のもう1人の主役、オリンパス社長の笹宏行氏だ。その表情は対照的にぎこちなかった。
「ソニーは医療事業に本格参入する。2020年の売り上げは2000億円以上を目指す」
会見で高らかに宣言した平井氏が破顔するのも無理はないのかもしれない。何しろソニーが1年以上かけて練り上げたオリンパスとの提携計画が、実を結んだ瞬間だったからだ。だが、そんな平井氏の喜びとは裏腹に、ソニーに対する市場の動きはつれなかった。
両社が資本提携を公式発表した前日の9月27日と、記者会見した翌日の10月2日の株価(終値)を比べてみよう。ソニーは929円から928円へと1円下がってしまったのだ。一方のオリンパスは1494円から1577円へと5.6%上昇した。
「今回の提携はオリンパスの勝ち」(JPモルガン証券のシニアアナリスト、森山久史氏)と言い切る声も出るなど、オリンパスが実利を取ったという声が市場では優勢なのだ。