生活を豊かに彩るアートの世界。バンクシーやバスキアなど、ニュースになることも多い。近年は中東や中国の富裕層を中心に活況を呈していたアート市場だが、コロナによってその様相は一変。それは購買者側だけではなく、アーティスト側にも変化を及ぼすことになる。ウィズ/ポストコロナ時代のアートについて『新型コロナはアートをどう変えるか』(光文社新書)の著者であり、横浜美術大学学長の宮津大輔氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
世界情勢がアート市場に
及ぼす影響は大きい
新型コロナウイルスは、現代のあらゆる事柄に影響を及ぼし続けているが、アート業界もその例に漏れない。
ウィズ/ポストコロナ時代のアート業界の予測が話題となっている『新型コロナはアートをどう変えるか』(光文社新書)の著者であり、横浜美術大学学長の宮津大輔氏は、「アート業界と世界情勢は切っても切れない関係にある」と話す。
「『芸術』と『経済的な動き』を切り離して考えるべきだという人もいます。しかし芸術作品というのは、市場で価格がつけられることでその評価が可視化されます」。こうしたことの積み重ねが、美術史の重要な側面を形づくっていると言う。
「実際、12世紀後半に『板絵』が誕生し、絵画が可動可能になったときから、優れた作品と貨幣との交換は促されてきたのです。現在、アート市場における取引実績はアメリカ、中国、イギリスがトップ3。いずれも経済大国であることからも、アートと世界経済は密接に関わっていることがわかります」
上記3カ国に加えて、近年のアート市場で存在感を示すのはオイルマネーだ。