スマホの表示をモノクロにするのが
オススメな理由とは?

 スマホによる脳への悪影響を避けるにはどうしたらいいのだろうか。

「スマホの電源を切る」「スマホをサイレントモードにしてポケットにしまう」というのも確かに解決策だ。だが、ハンセン氏によれば、それだけでは効果がない。スマホの存在を意識するだけで、集中力が阻害されるというのだ。別の部屋に置くなど、完全に遠ざけてその存在を忘れるほかないのかもしれない。

 本書の巻末には、「デジタル時代のアドバイス」として、スマホによる脳への影響を軽減するための著者からの提案が箇条書きされている。

 まずは「自分のスマホ利用時間を知ろう」とある。最近のiPhoneには「スクリーンタイム」という機能があり、何時間画面を見ていたかを記録して知らせてくれる。そういった機能を使うなどして、実態を把握するのが対策のスタートになるということだ。

「毎日1~2時間、スマホをオフに」「集中力が必要な作業をするときはスマホを手元に置かず、隣の部屋に置いておこう」「チャットやメールをチェックする時間を決めよう」。これらを励行するのはそれほど難しくないだろう。決心すればいいのだ。「スマホの存在を認識しない時間」を意識的に作り出し、習慣化することが大事ということ。

 面白いのは「スマホの表示をモノクロに」というアドバイスだ。色のない画面の方がドーパミンの放出量が少ないのだそうだ。

 本書を読むかぎり、ハンセン氏は、完全な「脱スマホ」を主張しているわけではない。数日間デジタル機器を遠ざけるといった「デジタルデトックス」を勧めているのでもない。要は「意識にスマホが存在しない時間」をある程度確保することだ。

 冒頭に紹介した同僚の娘さんも「45分単位」をきっちり守るようにすれば、悪影響は避けられるのではないか。5歳のうちから、そういったメリハリのついたデジタル機器の使用習慣がつけば、むしろ健全な成長が望めるかもしれない。

 もっとも大事なのは、「スマホ(とドーパミン)に振り回されない」ことではないだろうか。あくまで自らの行動をコントロールするのは自分自身であり、スマホには「人間の思考や作業を補佐するツール」という本来の役割にとどめさせることだ。

 これは、AI(人工知能)とのつき合い方にも共通する。AIも、あくまで「ツール」として認識するべきだ。人間の主体性をしっかりと持つことこそ、現代社会を健全に生き抜く最大のコツといえるだろう。

(情報工場チーフ・エディター 吉川清史)

情報工場
スマホの過度な使用が「記憶力」を劣化させるメカニズム
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