主に団塊の世代以上の年代の人と話をしていて溝を感じるのは、高度経済成長のときのように、皆がそれぞれの夢を見ることのできた時代とは明らかに違うという価値観のズレだ。将来を展望したとき、仕事でも社会保障制度の面でも「何もいいことがない」と、もらす若い世代は少なくない。

 不安の要因の中には、人付き合いにおける緊張がある。いったい、この緊張の正体は、何なのか。

 前出のAさんは、いい人でいようとして、周りの評価を気にする傾向があるという。

「会社で電話を取ったり、文字を書いたり、ご飯を食べたりするのが、ものすごく苦手でした。手が震えて、相手に嫌な思いをさせるのではないか。嫌われるのではないかと思ってしまう。見られているような感じがして、不安になるんです」

 電車やバスのつり革を触るのがイヤだという不潔恐怖もある。なるべくなら、吊り革にはつかまりたくないという。

「会社の職場でも、電車内などの公共の場でも、自分の物や書類などを落とせば、拾わなければいけない。落としたり、カバンを置いたりするだけでも、汚れるような感じがする。そういうことを頭でイメージすると、できないなと思うんです」

 実際、働けなくなったのも、こうした不潔恐怖が大きいという。

「私は、小さい頃から手が震えたりして、特に引きこもりだしてから強迫行為(潔癖や確認)がひどくなって、一緒にいた人を巻き込むようになり、一緒にいられなくなったのもあって、こちら(実家)に戻りました」

 Aさんの手が震えるのは、目上の人や、気に入られたい相手の前で起こる。「失敗を恐れる」「きちんとしないと嫌われる」「見捨てられる」という不安があるからだと自らを分析する。

 別の40代の会社員経験者のBさんは、こう指摘する。

「目に見えないもの。予測不可能なものからくる不安がある。リスクの許容できる範囲を超えると、先行きが不安になる。自分でも、なぜ怖いのか、説明がつかない。他の人にもなかなか納得してもらえないことがあるのではないか」