日本には、企業が農地を購入することが認められていないという、時代遅れの規制がある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

早急に取り組むべき
農地取得の規制改革

 菅義偉総理は、規制改革を通じた成長戦略を掲げているが、日本では株式会社が農地を購入することが認められていないという、時代遅れの規制の改革も取り上げるべきといえる。

 これは1952年に制定された農地法で、「農地はその耕作者が自ら所有すること」という規定にもとづくものとされている。この戦前の不在地主を禁じることが目的の法律について、自然人でない企業は農地を所有できないという解釈があえて行われてきた。

 農業は会社法が適用される立派な産業であり、法人という経営主体の存在を無視した農水省の時代錯誤な解釈は、事実上農協による農村経済の支配を守るための手段となっている。これが2000年の農地法改正で、農業者が設立する農業生産法人という特殊な法人形態が設立された。しかし、資金力に乏しい農業関係者が過半数の議決権を持たなければならないという制約から、農業の大規模経営や長期安定的な経営を損なうリスクが大きい。

 こうした中で、兵庫県養父市では、全国で唯一、普通の株式会社による農地取得が認められている。これは農地法の特例を認め、企業による農地取得のビジネスモデルをテストする国家戦略特区制度を活用したものである。この特区の設置期間は5年間で、その期限が2021年8月に迫る中、この方式を全国的に解禁するかどうかが大きな焦点になった。

 規制改革とは、本来は経済社会環境の変化に対応しない法律の改正を、全国一律で実施することが本筋である。しかし、規制の所管省庁は、既存の規制を変えることで様々な弊害が生じるリスクがあるとして、その改革に消極的な場合が多い。

 このため、改革に前向きな市町村が、その行政責任を分担することで、特定の地域について規制改革の実験を行うことが特区の目的である。その結果、規制改革の弊害が見られないことが検証されれば、その本体の法律を改正することで全国的に実施するという、二段階のプロセスを経ることになっている。たとえば、農地のリースを通じて企業が農地経営に参入することを認めた2009年の農地法の改正も、それに先立つ構造改革特区での実験で弊害が見られなかったことに基づいている。

 今回「法人農地取得事業特区」を活用した養父市は、典型的な中山間地域であり、農業従事者の高齢化や後継者不足による耕作放棄地の増加という全国に共通する問題を抱えていた。このため、地域の中小企業などの積極的な農業参入を促すために、従来の農地のリース方式だけでなく、農地の取得も含めた多様な選択肢を企業に提供することとした。